リーダーは、組織やグループの構造と文化を強化することによって、制度的なホールディングを提供する。

 たとえば、雇用が守られて、組織に公平に対応してもらえると、人々を安心させるような施策や手続きを導入する。あるいは、派閥争いを助長するのではなく、さまざまな人が意思決定に参加して、新しい課題にもともに取り組むような対話を促進する。

 これは経営幹部にとって、危機に際して最も影響力の強いホールディングでもある。このようなホールディングを示すことができないと、共感や理解を口にしても空回りする。逆に言えば、制度的なホールディングを示すと、個人的に嫌われているリーダーも受け入れられやすいだろう。

 制度的なホールディングを示す際は、給与や健康保険、労働条件が今後どうなるかを説明する。

 働き方が変わるのか? 目下の最優先事項は何か? 誰が何をすればいいのか? 見通しが立たない場合も、ほかの選択肢ではなく特定の措置が賢明だと考える理由を、説明することはできるだろう。

 噂を否定して、いつも以上に全員の参加を促して、協力を確保する。これらの対応をしたうえで、定期的な休息や瞑想、運動を奨励する。リーダーの注意義務には、そこまで含まれる。

 制度的なホールドを提供したら、次は周囲に対人的なホールディングを実践して、彼らの手本となる。

 そのためには、あなたが現在のプレゼンスを高める必要がある。リーダーとしては未来に集中したいかもしれないが、人々の目の前の経験や不安を見つめて理解することができなければ(いますぐ解決できなくても構わない!)、現実逃避にすぎない。

 ウィニコットの言葉を借りれば、ほかの人々が「ありのままで」いられるように、継続的に配慮のある寄り添い方を身につける。

 これは、必要とされるときだけそばにいて、支えるだけではない。承認(恥ずかしがったり困惑したりすることなく、好きな感情を持てる安心感)と、好奇心(自分の環境をさまざまな角度から考慮して、さらに将来を想像すること)が混じり合ったものだ。

 ウィニコットが説明したように、ホールディングの核心は、無力さに屈することなく、苦悩や困難を受け入れることだ。

 ホールディングを提供するのは、リーダーだけではない。職場でもどこでも、私たちが互いにできることはたくさんある。

 私はスーザン J. アシュフォードとエイミー・レズネスキーとともに、フリーランスとして成功する労働者について研究した。彼らはギグ・ワークの経済的および感情的な浮き沈みをやわらげるために、仲間や行動様式を通じてホールディングの環境を育んでいるのだ。

 ジェニファー・ペトリグリエは働くカップルの研究で、最も成功しているカップルはホールディングを実践していることに気がついた。パートナーは私生活で支え合うだけでなく、キャリアの悩みと向き合っている相手を支え、仕事での成長を後押ししている。

 さらに、私は職場とグリーフ(身近な人と死別して悲嘆すること)についてサリー・メイトリスと論文を執筆した際、文献を調べ、やはりホールディングが同僚(あるいは管理職)が差し出すことのできる、最も価値のある贈り物だとわかった。最初は人の痛みを見守りながら、彼らが新しい意味を見出せるように手助けするのだ。

 この贈り物は、喪失を共有する場合はさらに重要になる。ホールディングを通じて、ともに人生を取り戻すことができる。