自分が喪失に直面したときに、管理職にどのように扱われたかは、けっして忘れないものだ。組織や上司、同僚が、危機のあいだ自分をどのように抱きしめてくれたかも(抱きしめてくれなかったかも)、記憶に残るだろう。あるいは、ホールディングに失敗して、すでに枯渇した資源を使おうと悪あがきをする企業や組織もある。
危機に直面すると命令や統制に頼りがちだが、私たちが危機を乗り越えられるように支えてくれるのは、ホールドするリーダーだ。そのようなリーダーこそ、将来のビジョンを明確にすべきときに、頼りになるはずだ。
最も説得力があって恒久的なビジョンを持つリーダーはどのような人か、あらためて考えてほしい。管理職の人々にそう促すと、彼らはあることに気がつく──そのようなリーダーはビジョンから始めたわけでも、ビジョンを掲げたところで止まっているわけでもない。
人々のことを真剣に考えるところから始めて、彼らと、彼らの不安を抱きしめていると、ビジョンが浮かび上がる。そして、そのビジョンを「ともに」実現するために必要な変化を通して、彼らを支えるのだ。
そのようなリーダーのビジョンは私たちを虜にするがゆえに、私たちはそのビジョンを通じて彼らを記憶するのだろう。しかし、私たちを本当の意味で自由にするのは、彼らの抱擁なのだ。
HBR.org原文:The Psychology Behind Effective Crisis Leadership, April 22, 2020.
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