感染拡大を続ける新型コロナウイルスによる世界規模の経済危機は現在進行形だ。大きな危機に際して苦境に立たされている企業は多いが、その一方で、ヘルスケア産業やオンラインサービスなどでは新しいニーズも顕在化しており、それらを核とした大きな産業構造の変化はすでに始まっている。歴史を振り返れば、これまでにも人類は感染症の脅威に繰り返しさらされており、それは産業のパラダイムシフトを創出する機会にもなってきた。今回の新型コロナウイルスのまん延は、消費者の意識をどう変え、ビジネスはどう変わるのか。アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 インダストリーコンサルティング日本統括 中村健太郎氏に聞いた。
国境のない危機をもたらした新型コロナウイルス
── 新型コロナウイルスがもたらす危機について、企業の経営層の反応はいかがでしょうか。

アクセンチュア株式会社 ビジネスコンサルティング本部 インダストリーコンサルティング日本統括 マネジング・ディレクター
フューチャーアーキテクト、ローランドベルガー、BCGを経て2016年にアクセンチュアへ参画。全社成長戦略、新規事業創造、デジタル、組織・人材戦略、M&A戦略等の領域において、幅広い業界のコンサルティングに従事。
反応は大きく二分されています。すなわち、早期の収束を期待して最小コストでビジネスを元に戻そうとする立場と、パラダイムチェンジを見据えて挑戦に打って出ようという立場です。体感的には8:2ぐらいで前者、つまりコロナ禍を一過性のけがのようなものと捉える経営者の方が多い印象です。しかし、過去の感染症と同様に、コロナも世界的に大きな社会変革をもたらすことは必至であり、社会変化・枠組みの揺らぎが、この20年間、グローバルプレーヤーに後塵を拝する日本企業にとって、経営存続の危機であると同時に、大きな事業機会をつかむ好機でもあると見ています。
── これまでにも、東日本大震災のような、社会の変化を伴う危機がありました。
はい。これまでの自然災害との大きな違いは、デジタル時代に国境を越えた危機が訪れた点です。コロナは国境を越えて拡大します。一方、Stay Homeを余儀なくされた我々は、デジタルデバイスを通じて世界中の人々とつながります。
日本は歴史的に国境を閉じれば安定し、国境を開くと体制が揺らぐ傾向にありました。江戸幕府と黒船をはじめとした過去の政変から、フィーチャーフォンとスマートフォン等、今日のビジネスまで、日本は想定外に国境が開き海外の波を受けるともろさを露呈してしまう。従いまして、今回の危機を最初からグローバルスケールで捉えることが重要であると考えます。