●この機会に従業員にジョブ・クラフティングを促す

 リーダーは意識して時間を確保し、従業員一人ひとりと本人の強み、および新しい働き方でそれを活かす方法を話し合うべきだ。彼らがこれからの数週間、数ヵ月、数年間で、どのような能力や才能を仕事でより発揮し、身につけたいと思っているのかを聞き出す。

 このようなジョブ・クラフティングによって、個人の強みを活かすことが可能になる。すなわち、独自の興味や視点、経歴を拠り所にして、仕事の進め方や組織に提供する価値を決める。すると「ベストセルフ(最高の自分)」が自分の働き方を決めるようになり、仕事がいっそう楽しくなる。

 マネジャーの中には、従業員がより自分らしく働き、一般的な働き方から逸脱することを不安に感じる人も多い。重要なタスクが遂行できないのではないか、怠けるのではないかといったことを心配する。

 しかし、在宅勤務が不可避となったいま、従業員はすでにかつてないほどの自主自律に対応しようとしている。これをチャンスだと捉え、従業員に自分らしく働く自由を与え、それぞれの才能や興味を探らせよう(フランチェスカが「『建設的な不調和』で企業も従業員も活性化する」に、ダンが著書Alive at Workに書いているように)。

 病院やNPO、コールセンターを対象とした筆者らの共同研究により、リーダーが職員に対して、それぞれの特異な強みを強調し表現するよう促すと、職員のパフォーマンスが向上し、燃え尽きる割合が低下することがわかっている。

 従業員は職場で最高の自分でいられるとき、自主自律的に働いていると感じられ、仕事にやりがいを見出しやすい。自宅のリビングルームで仕事をしていても、エンゲージメントが向上する可能性がある。自分で仕事の進め方を決められると、その重要性がより増して感じられる。

 現在の危機は、自分の仕事が誰に利益をもたらし、自分がどのような貢献をしているのかを、従業員一人ひとりが振り返るきっかけにもなるだろう。この危機以降、従業員が働き方を工夫して、仕事によりやりがいを持つことができるように、リーダーとして力を貸そう。


HBR.org原文:Coaching Your Team Through Uncertain Times, April 24, 2020.


■こちらの記事もおすすめします
あなたが危機で取っている行動はリーダーシップか、それともマネジメントか
危機下のリーダーは、その人間性がいっそう問われている
ビジョン頼みのリーダーシップで危機を乗り越えることはできない