(2)ハイブリッド・モデル

 現在のオンライン講義の実験は、従来の講義のうち代用可能な部分と、補強または拡張可能な部分、そしてデジタルメディアは置換不可能な部分について、リアルタイムのデータを提供してくれている。

 大学は各講義につき、対面経験が必要なレベル、リアルタイムのバーチャル経験が必要なレベル、そして非同期的なバーチャル経験が必要なレベルを評価し始めなければならない。

 たとえば、物理学の講義を考えてみよう。質量や長さ、時間の基本概念は、ソフトウエアのグラフィックやオーディオビジュアル技術を使って教えられるだろう。学生は自分のペースで学び、必要なだけ繰り返し、キーワード検索をし、コンセプトを結びつけ、自分のレベルに合わせて学習モジュールをアレンジすることができる。だが、物理学を学ぶためには、ラボでの直接的な経験を必要とする側面がある。

 古代ローマの文化や民主主義といった講義は、幅広いディスカッションが恩恵をもたらすので、バーチャル・ミーティングで教えることができる。これに対して、ロボットを組みてたり、バレエを学んだりするためには、教員やほかの生徒と、同じときに、同じ場所に集まる必要がある。

 大学の理事会と総長は、以下の問題を検討するべきだ。

・対面授業でなければ提供できない要素は何か。大学はいま、各講義で必要とされる対面、リアルタイム/バーチャル、そして非同期的/バーチャルの最適バランスを見極めるのに必要なデータを有している。それは、4年未満で学位取得課程を修了する方法を探るインサイトにもなる。ハイブリッド・モデルは、レジデンシャル経験の恩恵を維持しつつ、教育コストを削減するものになるだろう。

・ハイブリッド・モデルでは、どの専有財産が差別化要因になるか。たとえば、ノースウエスタン大学の看板モデルは、一部の学期をフルタイムの就業期間に代えることができる共同プログラムだ。同大学はこのような経験に基づく学習を、ハイブリッド・モデルの差別化要因に位置づけることができるだろう。

・最適な学費はいくらか。コロナ禍が終息したら、大学は大きな値下げ圧力にさらされる可能性が高い。ハイブリッド・モデルを使えば、学生一人当たりの学費を下げる一方で、学生数を増やしてバランスを取れるだろう。これまで見てきた通り、講義の多くの部分はオンラインで提供できるし、最小限のコストでスケールアップが可能だ。