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新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、大学が対処しなければならない課題は山積みだ。対面授業を前提とした従来のモデルが崩壊し、オンライン教育が主流になることで学生のニーズも大きく変化する中、リーダーは何をすべきなのか。本稿では、大学が選択すべき3つの教育モデルを紹介する。危機の渦中で実験を繰り返し、自分たちが進むべき道を決めなければならない。


 大学はいま、大急ぎで対処しなければならない目先の問題が山積みだ。

 大幅な予算削減、オンライン教育に従来通りの学費を払うことに対する学生側の消極性の高まり、支払済みの学費の返還要求、学費を満額払ってくれる外国人学生が消滅する可能性、大量の入学延期、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)と不況による学生の経済的支援ニーズの拡大、そして大学を再開するべきか、どのように再開するかという問題もある。

 しかし、大学のリーダーは、目先の課題に対応することに追われて、長期的な課題を忘れるべきではない。現在の危機は、大学をつくり直すチャンスももたらした。本稿では、大学がみずからの選択肢を検討し、代替策を実験し、計画立案をいますぐ開始するための戦略的枠組みを示す。

 ●新しい高等教育のアジェンダ

 米国の大学を襲う嵐は、3つの外的要因からなる。

・高等教育のコストの急上昇。学生はあり得ないレベルの借金を背負っており、社会問題化している。自動化が進んだ世界では、高等教育を必要とする人はもっと増えるだろう。高等教育がより手頃な料金で、よりアクセスしやすくなるような教育改革が必要だ。

・次世代デジタルテクノロジーの成熟。これにはモバイルテクノロジー、クラウドコンピューティング、機械学習、人工知能(AI)、拡張現実(AR)、そして仮想現実(VR)などが含まれる。したがってオンラインで、大量の人に、従来よりも安い費用で、イマーシブ(没入型)かつパーソナライズされた教育を提供することが可能だ。

・オンライン授業に対する心理的バリアの低下。コロナ禍で、否が応でもオンライン授業の実験が行われてきた結果、親や学生、教員、そして大学リーダーにおけるオンライン授業に対する抵抗感は大幅に低下してきた。

 最初の2つは、しばらく前から起きていた現象だが、コロナ禍で改革の緊急性は増した。大学リーダーは現在、危機の中で学んでいることを最大限に活用して、これからの数十年に起こる最大のインパクトに備えなければならない。すなわち、現在のオンライン学習の実験データを使って、来年度に小規模な試験プログラムを立ち上げ、将来の大学教育モデルを試してみるべきだ。

 本稿の目的は、大学リーダーが未来の大学像を思い描く(それは短期的なアクションにつながる)ためのアジェンダを設定することである。彼らは、以下の3つのルートのいずれかを選ばなくてはならない。