世界デジタル競争力ランキングで日本は23位
――先ほどのお話にもあったように、デジタル競争力という点では日本企業は後れをとっています。
実際、世界63カ国・地域のデジタル競争力を知識、テクノロジー、将来に向けた準備の3つの主要ファクターから分析した国際経営開発研究所(IMD)の世界デジタル競争力ランキング2019によると、日本は23位に甘んじています。
一方、世界11カ国・14の業界を対象にアクセンチュアが実施した調査(2020年1月から2月にかけて実施)において、日本企業の13%を占めるDXチャンピオン企業(デジタルトランス・フォーメーション投資から大きな効果を創出している企業)では、デジタル投資の売上高アップへのポジティブ・インパクトがその他の企業に比べて約3倍にも上っていることが分かりました。さらに、DXチャンピオン企業はその他の企業の1.6倍をデジタル投資に向けています(いずれも2017~19年の累計)(図3)。このように投資の効果も規模も大きいDXチャンピオン企業は、その他企業をますます凌駕していくと考えられます。

出所:アクセンチュア
メーカーも顧客と直接つながることが必要
――製品・サービスの価値の大部分をAI・アナリティクスなどのデジタル技術が占めるようになる中、どのようなものづくりを目指すべきでしょうか。
ユーザー一人ひとりの嗜好・傾向に合わせたパーソナライズされたサービス・製品が選ばれる時代になっています。メーカーもユーザーと直接つながり、製品やサービスを個人仕様にしていくことが必要です。
一例として、コーヒーマシンなどのメーカー、Keurigと酒類メーカー、Anheuser-Busch InBevによるジョイントベンチャーである「DRINKWORKS」のビジネスモデルを紹介しましょう。同社が開発・販売しているのは、ネスプレッソのカクテル版ともいえるカクテルメーカーです。リキュールと天然のフレーバーを入れたポッド、炭酸、水を組み合わせて、バーで出されるような多彩なカクテルを瞬時に作ることができます。カクテルメーカーとポッド、炭酸精製用二酸化炭素ボンベは同社が販売し、輸送コストがかさむ水はユーザー自らが調達します。
このビジネスモデルでは、いつ誰がどこで何を飲んだかという情報をインターネットから収集し、ドリンク種別・時間帯別の消費量を分析して需要予測や生産計画の精度を上げていく仕組みを構築しているのが特徴です。これらの情報は、適切な在庫管理や製造部門と営業部門との連携強化、部品メーカーの生産計画などにも活用していくことができます。また、構想開始から18カ月という短期間で事業を開始し、ビジネスエコシステムを構築している点でも注目されています。