前進するための5つの方法
コロナ禍に実施した筆者らの研究からは、次のことが明らかになった。多くのマネジャーは、在宅で働く人々を効果的に管理することに苦労している。それが転じて多くの従業員は、自分の上司から信頼されておらず過剰管理されていると感じている。
このような時期に、不適切なマネジメントが従業員とその家族、そして経済にもたらす影響をふまえれば、リモートワークに関するマネジャーのスキル養成を支援することは急務である。筆者らの研究をもとに、以下を推奨したい。
(1)可能な限り高い階層から始める
マネジャーに、当人の上司とは異なる行動を期待するのはかなり無理がある。リモートチームの管理に苦労しているマネジャーは、仕事における自律性が低く、上司から過剰管理され、あまり信頼されていない。この結果が示唆するのは、組織は可能な限り高い階層から取り組めば、大きく変わるということだ。
(2)社内でリモートワークへの実践的および精神的なサポートを提供する
組織は柔軟な働き方を助けるという言葉だけに終始せず、その支援を本当に実行しなければならない。たとえば、従業員に必要な機器を確実に持たせる、ウェルビーイングのためのリソースを提供する、必要に応じて追加的な休暇を許容する、柔軟な働き方を助けるための研修を実施するなどだ。
こうした改善は、会社がリモートという業務慣行に真剣に取り組んでいることを示す強いシグナルになるため、在宅ワーカーのみならず管理者側にとっても有益となる。
(3)巧みに設計されたリモートワークには、どんな潜在的メリットがあるかをマネジャーに教える
テレワークに関する先行研究によれば、この働き方はオフィス勤務よりも生産的になりうるが、そのメリットの大部分はリモートワーカーに与えられる高度の自律性から生じている。
管理者側の不信感が理由で自律性が低く管理が過剰であれば、リモートワークのメリットは生じにくい。リモートワークを効果的に促進するためにどんな業務設計が必要なのかを、マネジャーは理解しなくてはならない。
(4)仕事の自律性を与える方法、および「点検」ではなく「状況確認」の方法をマネジャーに教える
部下を信頼せよ、とマネジャーに告げるだけでは十分とは思えない。それよりも、マネジャーは部下に仕事のやり方と時間に関する自律性をもっと与えるために、新たに権限移譲とエンパワーメントのスキルを学ぶ必要がある。それが従業員のモチベーション、健康、パフォーマンスを向上させることになる。
マネジャーは、自律性を部下への責任を放棄して見放すことと混同してしまう場合がある。自律性は部下とのコミュニケーションを減らすという意味ではないことを、学ばねばならない。従業員に自律性が与えられている場合、頻繁かつ定期的なコミュニケーションはいっそう重要となる。
ただし、細かく管理するための点検ではなく、状況を確認し、情報や助言を与え、自律性を支援すべきである。筆者らの分析では、他者を監督しながらも自分を管理職やプロフェッショナル職ではないと定義する人は、このような訓練を最も必要とする。
(5)成果に基づく管理の手法をマネジャーに教える
成果に基づく管理(management by results)は、仕事の自律性と密接に関連する。仕事のタイミングとやり方を従業員自身の裁量に委ねる場合、彼らが結果を出しているかどうかマネジャーが吟味することが重要だ。したがってマネジャーは、インプットよりも仕事のアウトプットをより重視する必要がある。
成果に基づく管理の究極は、完全結果志向の職場環境(Results Only Work Environment:ROWE)である。従業員が結果を出している限り、仕事をする時間、場所、方法について管理者側はほとんど、あるいはまったく関知しない。ROWEがパフォーマンスにもたらす成果は最初にベストバイで確認され、その後は他の企業でも実証されていった。
コロナ禍の時期に在宅ワーカーを管理するマネジャーは、ROWEほど極端なやり方は不要かもしれない。とはいえ、従業員を縛る鎖を取り外し、頻繁に点検しなくても仕事を遂行してくれるという信頼を持つことは必要だ。
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コロナ禍の最中、一定数のマネジャーは、「視線」が届かない従業員の管理になかなか慣れることができないようである。それに伴う形で、多くの従業員は上司からの綿密な監視と不信感によってネガティブな影響を受けている。
だが幸いな点として、このようなマネジャーは支援と訓練を受ければ、遠隔でのマネジメントをもっと効果的に行うことができるのだ。
HBR.org原文:Remote Managers Are Having Trust Issues, July 30, 2020.
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