●挙手

 簡単そうに見える挙手の機能は、声を出して発言したい時の合図になる。しかし、この機能は「偽陰性」が起こりやすい。

 筆者らの一人が参加したバーチャル会議では、あるマネジャーが「新型コロナウイルス感染症と闘った個人的な経験がある人は手を挙げて」と言った。手が挙がらなかったため、彼はこう続けた。「それは素晴らしい。なぜならこれから議論するプロジェクトに全力を注ぐ必要があるからです」

 残念なことに、ウイルスに感染した年配者の世話をしている2人のチームメンバーは、挙手のツールを使うことができなかった。おそらく、ツールをすぐに見つけられなかったか、個人的な話を明かすのをためらったのではないか。

 全員の回答を得ることが重要な場合は、「はい/いいえ」の機能や匿名の投票機能のほうがいいだろう。

 ●はい/いいえ

 たいていは緑のチェックマークと赤のXマークで表示され、全員が迅速に回答できる。リーダーは、欠席者にあとから参加してもらうことができ、全員の意見が必要であると示すことができる。

 このツールの明らかな限界は、「はい」か「いいえ」で答えられない問題があることだ。詳細な意見を求めるには、投票かチャットが適している。

 ●投票

 匿名の投票は、個人を特定されることを恐れずに意見を気軽に示すことができ、その結果が多様な意見を掘り下げるための綿密な調査につながる。リーダーは「これほど隔たりがあるということは、何を理解しているのだろう」と問う前に、多様な意見をリソースとしてとらえると、このツールを最も効果的に使うことができる。

 最近、心理的安全性に関するリーダーシッププログラムを実施した。そこで起きた出来事について考えてほしい。ある上級幹部が「我が社には心理的安全性(の低さ)の問題があるとは思わないが、もし意見が違うなら教えてほしい」と表明した。誰も挙手やチャットで意見しなかったのは、驚くことではない。

 ファシリテーターはすぐに匿名の投票を行い、「社の心理的安全性のレベルを1から5で評価してください」と伝えた。回答の過半数が「3」だったことを受け、幹部は「私が憶測に基づいた質問の仕方をすべきではないのは明らかですね!」と述べた。すると人々は挙手のツールを使い、率直な意見を積極的に述べるようになった。

 別の会議では、マネジャーが匿名の投票ツールを使い、参加者に会社による複数のダイバーシティの取り組みについて「潜在的な影響力」と「現在のパフォーマンス」のランク付けしてもらった。その結果に基づき2×2のマトリクスが作成され、「影響力が高い/パフォーマンスが低い」取り組み(「最優先事項」)と「影響力が低い/パフォーマンスが高い」取り組みが特定された。

 投票ツールによって、より豊かで率直な対話が生まれた。その後、米国全土で人種差別への抗議活動が繰り広げられる中、ブレーンストーミングが行われ、アクションプランが策定された。

 ●チャット

 誰もが自分の言葉で、自分の名前を示しつつ、同時に意見を述べることのできるチャットは参加しやすい。しかし、時に発言が多すぎたり長すぎたりすると、見落とされるものが出てくる。

 簡潔さに関するルールを設けるのもいいが、チャットは口頭の会話の邪魔にもなる。全員が話を熱心に聞く必要がある時は、チャット機能をオフにしたほうがよいだろう。