COVID-19で顕在化した12の予兆例
1 移動することのコストが極大化:
デジタル技術の活用などでリモートワークが浸透したほか、「移動=安全性に対するリスク、コスト増」という意識の変化により人々の移動が大幅に縮小した結果、移動にかかるコストが大きくなっています。
2 リアルが贅沢で特別な体験に:
小売業などを筆頭に、実際の店舗でしか提供できない付加価値が見直されています。一部の経営者の間では「せっかくコストを払ってまで来店するお客様に満足してもらうためには、リアルでしかできない体験に注力すべき」という意識が高まっています。また、会計などは店舗ではなく、すべてオンライン決済に切り替えるような動きが加速する可能性があります。
3 場所と体験が分離していく:
家が仕事や勉強をする場所になる一方、例えば飲食店ではフードデリバリーなどの普及によって、「食べる体験」と「食べる場所」が切り離されていく流れが強まっています。これにより、お店の価値と食べ物の価値が分離され、両方を同じ場所で体験しなくても構わないという消費者が増えていくでしょう。
4 時間・モードの境界線が消失:
オンライン会議終了直後にクリックひとつでスポーツやライブ鑑賞、あるいは家族との食事などに切り替えるといったことが日常的になるにつれて、公私の切り分けをはじめとした時間・モードの管理が難しくなっており、従来は明確に分かれていた境界線が曖昧になっています。
5 強制的なデジタル体験:
リモートワークやECの利用など、これまでデジタルに馴染みのなかった人々にもやむを得ない手段としてデジタル体験が浸透してきています。一度それらを体験してしまうと、今やほとんどの便座に実装されている温水洗浄機能が良い例ですが、これまでの状態に戻ることは難しいでしょう。デジタル活用を契機に広まった働き方や購買行動は、今後も定着すると思われます。
6 ハーフデジタル/アナデジの進展:
「強制的なデジタル体験」と関連して、デジタル技術に対するリテラシーの高低に限らず、強制的にデジタルを活用せざるを得なくなった結果、中堅・中小企業を中心にデジタルの部分的・不完全な採用(ハーフデジタル/アナデジ)が進んでいくでしょう。
7 フルデジタル後の差別化戦略:
あらゆる企業がデジタル化に取り組むようになった結果、もはやデジタル化だけでは差別化要因につながらず、デジタルという共通の基盤をもとに、新たな差別化戦略を展開していくことが求められています。一例としては、ライブ動画を見ながら商品を購入するライブコマースや、アプリ上のコミュニケーションを通して商品を購入するチャットコマースなどが挙げられます。
8 顕在化した新しい選択基準:
商品・サービスを購入するときの選択基準が多様になってきており、消費者は従来の「はやい、やすい、うまい」に加え、コストや時間をかけて「きれい、安全、安心」という価値観を選好する傾向が特に強まっています。
9 社会への個人の責任が浮き彫りに:
「感染から自分自身や家族を守るために、節度をもって自律的に行動すべき」という意識の高まりと同時に、行政や企業に対しても同じような社会的責任(Social Responsibility)を求め、そうした取り組みを評価するという傾向が鮮明になっています。これには例えば、プラスチック製品の削減や自動車の排出ガス規制など環境負荷の高い事業に対する見直しの動きなどが含まれます。
10 帰属意識の縮小:
多くの日本人は勤務先の企業や居住地・出身地に帰属意識を持ってきましたが、外出しない期間が長期化することにより、そうした帰属意識が小さくなってきています。その一方、若年層を中心に所属するコミュニティの数は増加しており、例えば、スポーツチームやアイドルの応援など、共通のコミュニティや趣味などで生まれたつながりに帰属意識を感じる傾向が強まっています。こうした個人の帰属意識の変化をどのように捉えるかが今後、重要な経営アジェンダになっていくでしょう。
11 規則性の崩壊:
これはAIの領域ですでに起きていることですが、季節性や人々の購買行動、移動の状況などで、従来のパターンが崩れた結果、これまで高い精度で予測できていた将来の販売計画などに狂いが生じています。実際、都心よりも郊外の店舗でモノが売れるといった、これまでにない傾向なども出てきており、新たにデータセットを見直しながら新しい規則性を見出していくことが求められています。
12 非同期化する世界:
ウイルスの感染状況や感染防止に向けた各国の政策が一様ではないため、世界の非均一化が進んでおり、経済のグローバル化に歪みが生じています。また、日本においても都心と地方では状況が異なるなど、それぞれの地域で大きなギャップが生じる可能性が高まっています。