経営における二律背反を乗り越え、より“いいとこ取り”の最適解を志向せよ
── これらのトレンドを踏まえ、日本企業の経営者は今後どのような視点で変革を進めていくべきでしょうか。
アクセンチュアが分析した12のトレンドをもとに、日本の大手企業の経営層と議論したところ、すでに業界ごとに興味深い動きが起きていました。一部の先進的な企業は、大きなトランスフォーメーションに舵を切り始めています。
未来を予見し、それらが何であるかをしっかり見定め、自社の事業に当てはめながら将来のシナリオを洞察するというアプローチは今後の企業経営を成功に導く上で、非常に重要になってくるのは間違いありません。その意味で、今回のコロナ禍で民間企業や行政、さらには消費者レベルでデジタル化が加速し、その効用が体験レベルで社会に幅広く共有されたことも見逃せません。
また、こうしたデジタル化のインパクトが社内外でより広範に広がっていくと、これまで経営者が直面してきた事業執行から経営全般に至る二律背反的な、つまり一見両立が難しく思える事象に対しても、より柔軟かつ新たなアプローチで最適解を見出すことが可能になるのではないかと考えています。
図表3に示した通り、その具体例としては、「未来は予測するべきなのか、それとも自らの意思を込めて思い描くべきものか」、「同じ市場に属する各社とは競争すべきなのか、それとも協創を推進していくべきか」「自社の人材教育に注力するべきか、外部人材の登用を推進するべきか」といった議論があります。従来はどちらか取捨選択せざるを得なかったことに対して、社内外のデジタル化の波を利用して、“いいとこ取り”のような形で取り組みを加速させることができれば、より大きな事業機会の創出にもつながります。例えば、従来の競争関係を維持しつつ、特定の領域では競合企業と手を組んで協創を試みたり、自社で教育した人材と外部人材をうまく融合した人事制度を整備したりといったことができれば、企業を次のステージに導くために欠かせない新たな洞察を得ることも可能になるでしょう。ポストコロナ時代の日本企業には、こうした「未来予測」をもとに、その未来の中で自社がどうあるべきかを考えながら、変革を推進していくことがより一層求められているのです。
【参考リンク】「ポスト・コロナ 業界の未来」