実は、巨大テクノロジー企業はすでに、インターネット接続サービスの提供を一部で始めている。
フェイスブックは、「フェイスブック・コネクティビティ」という取り組みを通じて、60以上の国で限定的なインターネット接続を無料で提供している。人口密度の高い都市部で低コストのワイヤレス接続を提供したり、途上国の不便な地域で高高度のプラットフォームを通じて基礎的なインターネット接続を無料で提供したりしているのだ。
アルファベットは、光ファイバー回線の敷設プロジェクトを実施したり、傘下のルーン事業部門で、熱気球や無人機や高高度プラットフォームを通じたインターネット接続を提供したりしている。アマゾンは、3000以上の低軌道衛星を周回させて、地球上のあらゆる場所でブロードバンド接続を提供する計画を持っている。アップルも同様のプロジェクトを計画中だ。
これらの企業には、このような取り組みを行う資金もある。巨大テクノロジー企業は、ただでさえ歴史的高水準の収益を得ていたうえに、コロナ禍により、収益がさらに伸びているのだ。それに、ほかの問題で政府との和解につながる可能性があると思えば、協力することに前向きになるだろう。
それだけではない。協力することは、企業側の利益に結びつく可能性もある。インターネットにアクセスできる人が増えれば、自社の潜在的な顧客層も拡大するからだ。実際、巨大テクノロジー企業が上述のようなインターネット接続プロジェクトに巨額の資金を投じているのは、市場の拡大がビジネス上の恩恵をもたらすと期待しているからだろう。
コロナ禍は、米国社会が抱えているデジタル関連で最も根本的な問題を浮き彫りにした。テクノロジー企業に対して画期的な行動に乗り出すに当たって、ここでもう一度、歴史に目を向けたい。1934年通信法では、ベル・システムの独占維持を許す代わりに、すべての人にサービスを提供することを受け入れさせた。
いま政府が巨大テクノロジー企業と取引すれば、「悪魔の取引」だという批判の声も上がるだろう。しかし、それは先を見据えた現実的な一歩と見なすべきだ。巨大テクノロジー企業と取引して、2020年の社会に存在してはならない問題を解決するために動くべきである。
[編注2]本稿の英語版掲載後、同委員会の公聴会が開催された。
[編注3]本稿の英語版掲載後の10月20日、司法省は11州の司法長官と共同でグーグルをワシントンの連邦地裁に提訴した。
HBR.org原文:Antitrust Isn't the Solution to America's Biggest Tech Problem, October 02, 2020.
■こちらの記事もおすすめします
テクノロジー企業の「倫理オーナー」が抱えるジレンマ
フェイスブックの監視員会はユーザーの信頼を勝ち取れるか
GAFAの租税回避を見逃せば貿易戦争は不可避である