●マネジャーがその人物への共感を示す

 マネジャーがその人物への共感を示すことも重要だ。「この種の社員も、けっして悪い点ばかりではないのです」と、ロスバードは言う。極めて誠実で、「仕事をきちんとやり遂げたいという強い意志を持っている」場合が多いのだ。

 この種の部下の性格に関して高く買っている部分に目を向けるとよいと、ヒルは言う。「その人物の野心的でエネルギッシュな面を気に入っているかもしれません。そうした性格の持ち主は、チームにある種の活力をもたらすからです」

 1対1の面談を行う際は、このような社員への共感を示すべきだと、ヒルは助言する。たとえば、「あなたがいら立たしい思いを抱いていることは理解できます。誰もがあなたのようにやる気に満ちていたり、精力的だったりするわけではないですからね」などと言えばよい。

 もしかすると、マネジャー自身も、その部下と同じような立場に身を置いていたことがあるかもしれない。「あなたも昔、同様の苦悩を抱いたことがあるかもしれません」と、ヒルは言う。

「もしそうなら、その時の経験を話して聞かせましょう」。その頃に参考になったアドバイスを思い出そう。「私が力になれることはありませんか。一緒に状況を改善していきましょう」と、協力を申し出ることが有益だ。

 ●コーチングを行う

 このタイプの人物がつい陥りがちな「知ったかぶり」の言動を改めるよう、支援をすることも重要だ。「この種の人たちはたいてい、上司に対してはソフトな物腰で接します」と、ヒルは言う。そのおかげで、マネジャーはその人物と比較的接しやすくなっている。それなら、同僚に対してもそのような態度で臨ませればよい。

「自分がすべて知っていると思い込まず、同僚の考えを尋ねるよう促すべきです」と、ヒルは指摘する。マネジャーがさまざまな場面を想定したロールプレイングを行い、同僚との関係づくりに関するコーチングを実践するよう、ヒルは勧めている。

 ロスバードは、その種の社員が「反射的に同僚を見下したり、いら立った態度を取ったりすることを避ける」ために、周囲の人たちに対して、いわば推定無罪の精神で接するよう後押しすればよいと言う。要するに、簡単に結論に飛びつかないように求めるべきだというのだ。

 ●忍耐力を持つ

 最後に、マネジャーがこの種の部下に働き掛けても、すぐに効果があらわれると思ってはならない。人が行動を変えるには時間が掛かる。それに、同僚たちの見る目もすぐに変わるわけではない。

「その人たちは、課題を処理する能力はすでに持っています。そして今度は、対人関係に関する能力も高めようとしているところです」と、ロスバードは言う。「ほかの人たちに任せて、責任を持たせることを学びつつあるのです」

 自分を変えようとする部下自身にも、忍耐力を持たせる必要がある。自分自身に対しても、そして周囲の人たちに対しても、辛抱強くあるべきなのだ。

「同僚との関係を良好に運ぶことも一つのスキルであり、そのようなスキルを身につけることも一つの課題なのです。その点をはっきり理解させることが重要です」と、ロスバードは言う。「努力なしには、そのスキルを習得できません」

 ●覚えておくべき原則

【やるべきこと】
・周囲の人たちの感情を逆なでするスーパースター社員に、そのような行動パターンがみずからのキャリアに悪影響を及ぼしかねないことを理解させる。
・そのような部下に、周囲の人たちの感情的反応に気づくテクニックを教える。
・そのような部下に、まわりの人たちの考えを尋ねることの価値を教える。

【やってはいけないこと】
・そのような部下に厳しい指摘をすることを避けてはならない。自分が周囲にどのように思われているかを理解させることが必要だ。
・利己的な行動を許してはならない。同僚たちの視点を理解するのを助けよう。
・そのような部下に共感を示すことを怠ってはならない。自分に役立った過去のアドバイスを思い出し、それを教えてあげよう。