3. リーダーによる強力な指揮が欠かせない
この1年ほどの間、機能別や製品別にサイロ化された組織に代わり、デジタルテクノロジーにより結ばれたネットワーク型のオペレーションが増え始めている。
多くの企業幹部は、ハイブリッド型の環境の下で、自社の組織のフラット化が進んでいると述べている。大半のリーダーは、部下のエンパワーメントにも力を入れてきた。コロナ禍においては、従業員が土地や部署の垣根を越えて素早くつながる必要があるからだ。
リーダーたちは筆者らの調査に対して、部署間の協働を通じてイノベーションが加速したとも指摘している。業界内でのベストプラクティスの共有が加速したと述べた人たちもいる。
こうしたことは、民主的で好ましいことに思えるかもしれない。しかし、企業は、このような変化によって混乱が生まれないようにし、成果が高まるように留意する必要がある。
あるリーダーはこう振り返っている。「どうすれば組織全体が状況に正しく反応するようにできるのか、どうすれば多様なグループにリーダーシップを振るえるかを考えなくてはなりません。これらの活動すべてに仕組みが必要です。リーダーは細部に目を配ると同時に、視野を広く持たなくてはなりません」
現場の判断と主導権を重視するためには、その組織全体が明確なビジョンを共有し、有効なパフォーマンス評価システムを確立して、頻繁にフォローアップを行うことが不可欠だ。
今後1年間、企業のリーダーチームはかなりの時間を費やして、ハイブリッド型の環境での活動にまとまりを生み出すためのメカニズムを調整・強化しなくてはならない。それを通じて、現場の柔軟な対応をコロナ禍での必要に迫られた措置で終わらせず、長期的な強みに転換していくことが狙いだ。
「私たちの会社には、現場が起業家精神を発揮することと、中央集権的な調整を行うことが結合した企業文化を築けています」と、世界規模のメーカーでCEOを務める人物は語る。「そのような文化は、コロナ禍を通じて大幅に強化されました。この特異な状況に対しては、中央だけでも現場だけでもこのようにうまく対処することはできなかっただろうと、誰もが気づいたのです」