HBR Staff

新型コロナウイルス感染症のパンデミックのような予期せぬ出来事は、自分の人生や仕事の優先順位を見直す機会を与えてくれる。ただし、頭の中で考えるだけでは何を変わらず、気づけば元の仕事や働き方に戻ってしまうだろう。キャリアチェンジを実現し、新たな目的や目標に向かって前進するまでには3つのフェーズがあることを理解し、積極的に取り組む必要がある。


 予期せぬ出来事や衝撃は、自分の望みや優先順位を考えるきっかけとなり、人生やキャリアを大きく変える豊かな状況をつくり出す。多くの人がそのように考えている。新型コロナウイルス感染症のパンデミックについても、それは当てはまる。

 筆者が1年と少し前、パンデミックがキャリアチェンジにどのような影響を与えたかをオンラインで調査したところ、49%の人が次の回答を選択した。「休息および/または考え事をするダウンタイム(休止時間)ができた」

 これはよいスタートだ。しかし、成功するキャリアチェンジを何十年にもわたり研究してきた筆者が学んだことを1つ挙げるとすれば、「考える」だけでは不十分だということだ。私たちは、自分で考えて新しい行動を起こすことはほとんどない。むしろ、新しい考え方、そしてあり方に向けて行動を起こす。

 たしかに、これまでの習慣を破壊するような出来事は、真の変化を引き起こす可能性がある。新しい活動を試したり、人とのつながりを構築したり再開したりするチャンスを与えてくれる。

 日常の仕事から離れた、一見すると「非生産的」な時間を過ごしていても、私たちは重要な「内なる仕事」をしている。実存的な大きな疑問を投げかけたり、自分を幸せにするものを思い起こしたり、困難な選択をするための力を蓄えたり、自分自身の感覚を強固にしたりしているのだ。

 この1年で起きたことにより、多くの人は自分がもはや望まないものは何かを強く認識した。問題は、より魅力的で実現可能な代替案がまだ現れていないことだ。

 私たちは新旧の狭間で立ち往生している。そして、新型コロナウイルスの影響によるたいていの制限がようやくなくなりつつあり、オフィスへの復帰が間近に迫ったいま、以前の仕事や働き方に戻ってしまうという現実的な危険に直面している。

 キャリアチェンジをしたいと思っている人は、どうすればそれを避けられるだろう。この1年で学んだことを活かして、目標に向かって前進するにはどうすればよいのか。

 新型コロナウイルス感染症のパンデミックのような、きっかけとなる出来事がもたらす変革の可能性に関する研究によると、3つのフェーズからなる転機のサイクルに積極的に取り組むことで、永続的な変化を起こせる可能性が高い。その3つとは、「分離」「リミナリティ(境界性)」「再統合」に焦点を当てたものだ。

 それぞれのフェーズについて、詳しく考えてみよう。