●再統合:新たなスタートを切る

 筆者がパンデミックの経験を共有し合っている企業幹部や専門家の多くは、多忙な出張や家族との時間を犠牲にするような長時間労働には戻りたくないと言う。しかし、それにもかかわらず、戻ってしまうことを懸念している。

 それも当然だ。外部からの衝撃が永続的な変化をもたらすことは、ほとんどないからだ。私たちは何らかの警鐘を鳴らされた後でも、物事が「通常」に戻ると、ただ元の状態に舞い戻ってしまうというのが典型的なパターンだ。

 ペンシルバニア大学ウォートンスクールのアレクサンドラ・ミシェル教授が、投資銀行員の4つの集団を対象に12年間にわたり過労の身体的影響を調査したところ、2016年にそのような結果が示された

 彼らにとって、持続不可能な仕事の習慣を避けるには、仕事や職業を変えるだけでは不十分だった。多くは仕事量が減ると想定された組織に移った後も、身体的に衰弱した。なぜなら、実際は以前と同じような厳しい立場に就き、健康を回復させ、懸命に働く自分から心理的な距離を置くための十分な時間を転職する前に取らなかったからだ。

 習慣の不連続性を活用できるかどうかは、日常生活を破壊するような変化の後に訪れる、極めて限られた機会に何をするかにかかっている。

 たとえば、環境に配慮した持続可能な行動をとる機会は、引っ越し後だと最長3カ月間持続するとの研究結果がある。同様に、「再出発」の効果に関する研究によると、人は休暇から仕事に戻った時に目標志向のモチベーションが高まるが、このモチベーションは復帰初日にピークに達し、その後は急速に低下する。

 現在、多くの企業が実験的に導入しているハイブリッドな職場環境は、キャリアチェンジを望む多くの人々にとって新たなチャンスとなる可能性がある。古くからある手掛かりは存在せず、意識的に選択する必要があるため、新たな目標や目的を実行する機会となる。

 あなたもその一人だとしたら、この期間を利用して真のキャリアチェンジを遂げるのか、それとも何事もなかったかのように元の仕事やパターンに戻るのか。それを決めるのは、あなた自身だ。


"The 3 Phases of Making a Major Life Change," HBR.org, August 06, 2021.