(2)利己的な緊急性

 私たちは誰でも、自分のニーズや欲求、視点に意識が集中する「自己中心性バイアス」に陥る。会議に関してこのバイアスが引き起こす現象を、本稿では「利己的な緊急性」と呼ぶことにしよう。

 簡単に言えば、リーダーはチームのニーズやスケジュールを必ずしも考慮せずに、自分の都合に合わせて会議を予定する。チーム内でスケジュールの衝突が起きることを承知のうえで予定を決める時もあり、全員がそれぞれの予定をずらさなければならなくなる。

 ただし、利己的な緊急性は非常にいら立たしいが、必ずしも悪意があるわけではない。よく知られている通り、人は機会費用を認識することが苦手だ。つまり、多くのリーダーは、自分が会議の予定を決めることで、チームがもっと価値のあることに時間を使えなくなるという事実に気づいていないのかもしれない。

 善意が日課に飲み込まれてしまう時もある。筆者の一人は、以前の仕事では通勤時間が長かったため、マネジャーが午後4~5時にチームのスケジュールを入れないようにしてくれた。おかげでラッシュアワーを避けて帰宅できるようになった。この思いやりは24時間続いた。翌日になると、午後4~5時は会議の予定であふれていたのだ。

 こうした問題に対処するために、チームに会議の出席を求めることに関連する機会費用について、リーダーは積極的に考える必要がある。実際に、経済的コストを生む時もある。たとえば、ある企業では、週1回の中間管理職の会議に年間1500万ドル以上のコストがかかっていることがわかった。さらに、通勤時間や精神的なエネルギーの損失などの個人的なコストもある。

 機会費用への対処が難しい時は、会議ごとのコストを金額で計算するツールもある。チームで話し合い、会議がプライベートや仕事にどのような影響を与えているかを考えることもできる。

 コストを把握したら、言うまでもなく、そのコストに対応できる方法を考える。会議の直前に招集して、その人のワークフローを妨げるのではなく、事前に予定を立てること。互いに都合のよい時間を見つけられるように努力し、メリットがデメリットを上回らないようであれば、会議を短縮するか、完全にキャンセルすることも検討する。

(3)コミットメントデバイスとしての会議

 会議をコミットメントデバイスとして、つまり約束を守るための仕組みとして使う時もある。行動科学では、たとえば上司との面談のように外部から期限が設定されると、モチベーションを高める効果があることがわかっている。ただし、会議自体は不必要な場合が多く、約束した目標を達成したかどうかを報告するだけになりがちだ。

 会議をコミットメントデバイスとしつつ、モチベーションの効果を損なわないためには、仕事が期限通りに終わった場合は会議がキャンセルされることを、チームに事前に伝える。もし期限までに終わらなくても、会議は役に立つだろう。遅れの原因となった予期せぬ要素について、話し合うことができるからだ。

 仕事が完了していれば、祝福のメールを送り、全員がそれぞれ1時間を節約できる。あるいは、スティーブ以外の全員は仕事が終わっている時も、会議は開かない。全員の時間を無駄にするのではなく、スティーブが責任を認識する他の方法を見つけよう。