●情報共有について再考する

 従業員たちが同じ場所で、ほぼ同じ時間に働いていた時は、会議を通じて認識を一致させたり、マネジャーが歩き回ることで重要な問題を把握したりすることが容易であった。ほんの何歩か歩くだけで(あるいはエレベーターに乗っている短い時間で)、重要な最新情報を提供したり、受け取ったりすることができた。

 状況のアップデートや質問の答えを得るまでに時間を要せば、生産性を損ないかねない。したがって情報の可用性を担保することは、柔軟な働き方を実践する職場において不可欠だ。

 非同期な仕事を円滑に進めるためのツールはいくつもある。ただし、従業員がそれらのツールをリアルタイムで使用できるようにして、更新し続けることが欠かせない。

 たとえば、作業を開始してから数週間後に初めて、完成品を共有リポジトリに上げるのでは意味がない。チームメンバー同士が数時間あるいは数日間、直接コミュニケーションを取れない場合には、関係者全員が仕事の進捗状況を把握できるようにすることが何よりも重要となる。

 進捗状況の透明性を高めることのさらなる利点として、従業員のアカウンタビリティ(結果に対する説明責任)が高まること、従業員がサポートを必要としている時、マネジャーがそれにすぐ気づけることが挙げられる(従業員が監視されず安全に働けていると思えるように、適切な境界線を設けることが前提だ)。

 古典的なプロジェクトマネジメントツールの利用も検討するとよいだろう。たとえば、RACIマトリクスはそれぞれのタスクについて、実行責任者(responsible)、説明責任者(accountable)、協業先(consulted)、報告先(informed)の4つの役割を明確に示すためのものだ。

 ●仕事の取り組み方を再検討する

 以上の3つのステップを組み合わせ、かつ発展させるために、マネジャーは従業員のタスクと優先順位を判断するフレームワークについて、これまで以上に掘り下げて検討しなければならない。

 タスクの構成要素と相互の関連性を整理し、どのタイミングで集中作業が必要か、どの段階であればプロジェクトの各パートを小規模なサブグループに任せられるかを判断することだ。このような情報はすべて、メンバーが共有するスペースに記録し、常に更新するのがよい。

 いくつもの異なるタスクの関連性を理解することは、優先順位を設定し、ボトルネックを回避するうえで特に重要だ。すべてを優先事項にすれば、何も優先されない。

 具体的な指針がなければ、多くの人は自分で優先順位を決め、その中でもより簡単で、より小さなタスクから完遂させるようになる。その結果、解決策が漠然として複雑な問題は後回しにされてしまう(そのような問題に限って、気づかぬうちに他のチームメンバーのみならず、マーケティングチームやオペレーションチームの進行まで妨げることになる)。

 動的環境の下では特に、優先順位は期間とともに変化していく。仕事の優先順位を頻繁かつ明確に伝えることで、いつ、どこで働いていても、従業員の時間と労力を有効に使えるようになる。

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 柔軟な働き方を望むならば、従業員自身が自律的な問題解決法を見出したり、最新情報を提供・確認したりするなど、それに伴う責任を負わなければならない。

 ただし、従業員を嵐の中に放り出せばよい、というわけではない。マネジャーには、すべての従業員が同じ方向に進み、正しい目的地に向かって舟を漕いでいけるようにする責任がある。それぞれが異なる時間に舟を漕いでいるにせよ、だ。

 従業員が生産性(あるいは正気)を失うことなく、より柔軟な働き方ができるように、マネジャーは、従業員がいつ協働するか、誰と協働するか、情報を誰とどのように共有するかについて、従来とは異なる発想に立ち、あらゆる変化を常に把握し、優先順位の変更を迅速に伝える必要がある。


"4 Ways Managers Can Increase Flexibility Without Losing Productivity," HBR.org, February 1, 2022.