ソフトウエアエンジニアのシモーヌの例を考えたい。彼女はコンピュータサイエンスの修士号を持ち、7年にわたるデータベース開発の経験を有するが、2015年以降は有給の仕事に就いていなかった。シモーヌは再就職プログラムの候補者としては完璧だ。ところが、ある伝統企業のプログラムに応募したところ、1時間もしないうちに不採用通知が自動送信されてきたという。
即座に不採用と判断されたことに驚いたシモーヌは、筆者が共同創業したアイ・リローンチのチームに連絡してきた。彼女に十分な資格があることは明らかだったことから、アイ・リローンチとしてもなぜ不採用になったのか、その理由を知りたいと考えた。シモーヌが応募したのは、アイ・リローンチの長年のパートナー企業だったこともあり、筆者らは事情を聞いてみることにした。
するとその会社は、シモーヌの経歴を詳細に確認し、技術分野における卓越した資質、常に最新技術に精通しようと努力する姿勢、そして長期にわたるキャリア中断を認め、彼女は最終的にオファーを受け取った。もしシモーヌが疑問を感じて、アイ・リローンチに連絡を取り、先方に確認することがなければ、採用されることはなかっただろう。会社側としても、最高の採用候補者を見落としたままであったに違いない。
シモーヌが最初に不採用とされたのはなぜか。シモーヌの職務経歴書には、2015年以降はボランティア活動を行い、最新技術の講習を受けていたと書かれていたが、それがキャリア中断の期間であることは明記されていなかった。さらに、会社側の採用担当者は経験が浅く、求職者の職務経歴書にキャリア中断の期間を見つける訓練を十分に受けておらず、シモーヌが再就職プログラムの対象になることを見落としていた。
機械的な審査に、再就職希望者のプロフィールや職務経歴書の取り扱いに不慣れな採用担当者が重なると、最近のボランティア活動や講習の参加実績が、確固たるキャリア中断ではなく、現在の何らかの職務経験だと誤解されるのは珍しいことではない。
これは、皮肉な現象でもある。求職者が自分のキャリア中断をカモフラージュするための対応が、キャリア中断の期間中であることをわかりにくくしてしまうからだ。その結果、知らずしらずのうちに、再就職プログラムの対象外と見なされる事態が生じてしまう。
リンクトインの新機能によって、希望者が職歴欄に「キャリアブレイク」を明示にできるようになった結果、再就職希望者は自分のキャリア中断を説明する完璧な仕組みを得られ、企業側はシモーヌのようなケースの再発を防ぐことができる。