●正当化

 アイデアを成功させるために必要なのは、自分が信じているアイデアを保証することだ。筆者らの調査でも、チームメンバーが似たような個人的経験を共有する、競合他社や実績のある同様の組織で似たようなアイデアがうまくいった事例を確認する、あるいはそのアイデアが自分たちの組織にとってどれだけ有益であり、どのように実行可能かを説明するといったことを通じて、アイデアを守っていた。これにより、権限の小さいメンバーのアイデアが切り捨てられてしまう事態を避けることができる。

 この戦術の重要性は、組織以外の場面でも見られる。たとえば、農業従事者の女性組織「ラ・アリゾナ・ナシオナル・デ・コンペシナソール」は、ハリウッドの「姉妹」が経験している職場のセクシャルハラスメントは事実だと賛同する公開書簡を発表し、被害者を法律面で支援する基金「タイムズ・アップ」(もう終わりにしよう)の設立を後押しした。

 ●実証

 イノベーションと対立に関する研究は、アイデアを形のない曖昧なものではなく、具体的な形で議論することの重要性を強調している。以前に却下されたアイデアが実現可能であり、重要であるという予備的な証拠を示すことは、アイデアの復活につながる。

「許可を求めるより、許しを請うほうがよい時もある」という言葉の通り、組織階層の下位にいる場合、アイデアがどのように機能するかを簡単な例で示したり、日常業務の一環としてデータを収集したりすることによって、アイデアを生かすための議論を促すことができる。

 アライ(理解者・支援者)はアイデアを増幅してくれるが、アイデアの発案者も、この実証のプロセスに参加できる。

 たとえば、筆者らは調査の中で、ある受付係が「リーダーシップチームのミーティングに、受付スタッフも出席するべきだ」と提案した。しかし、チームリーダーは、数年前にも同様の提案があったが、十分な支持を得られなかったと説明した。

 このアイデアはさらに何回か却下されたが、発案した受付係が受付スタッフチームとリーダーシップチームとの橋渡しを買って出た。調整役を務める中で、双方にとって不可欠な存在となり、リーダーシップチームのミーティングに受付スタッフチームの席を確保した。

 ●問題提起

 あるアイデアを支持しても、それが無条件の支持とは限らない。アイデアに関連する弱点を公に指摘すれば、アライにとっても率直な姿勢で解決策を考え、懸案事項に直接対処する機会となり、アイデアを生かすことができる。

 実際、アイデアを「殺す」最善の方法は、問題を指摘せず、具体的な弱点を挙げずに、アライが懸案事項に対処する機会を奪うことだ。アイデアの妨げになると思われるすべての障害を認識することは、発案者に対応の準備をさせ、アライが協力して問題を解決する手助けとなる。

 つまり、問題提起とは相手を黙らせることではなく、アイデアの足場を固めるためには時間と労力がかかることを認識させるということだ。