「発言の培養」を促進する
従業員の優れたアイデアをよりよい形で実行するために、リーダーは発言の培養を担当するチームを育成しなくてはならない。発言の培養をチームに導入することによって、リーダーは次のようなことが可能になる。
・メンバーが互いに高め合う、あるいは最低限でも認め合う雰囲気をつくる。
・他のメンバーのよいアイデアを発展させることを是とし、競争ではなくチームワークを促進する。
・チームとしてどのように取り組むべきか、実践的な行動を提示して認識させる。
・リーダーの善意だけでなく、説明責任に基づく仕組みを構築する。
最後の点は、リーダーが支持するとは限らないアイデアも実行に移せるように、チームが団結して影響力を行使できる状況を整えるという意味であり、リーダーにとって難しい課題になりうる。しかし、発言の培養をチームの模範とすることは、従業員の士気を高めるという長期的な恩恵が期待でき、権限の小さなチームメンバーのミーティングでも有効な手段になるだろう。
リーダーが発言の培養を促すために利用できるツールは、以下の2つである。
●適切な戦術を選ぶ
リーダーシップの重要な機能は、他の人が直感的に思っていても言葉では明確に表現できない問題や、取り組むことは許されないと感じているような問題に名前をつけ、意味を与えることだ。これはまさに、発言の培養である。
この発言の培養の概念をチームで共有し、その戦術を実践する機会について考えるようメンバーを促すことで、培養を促す土壌をつくることができる。そうすることで、チームに心理的安全性とインクルーシブネス(包摂性)をもたらすという二次的な恩恵も生まれるだろう。チームメンバー全員が、アイデアを出し、それを実現することに自分も重要な貢献をしていると思えることが重要なのだ。
チームに発言の培養を導入する手助けとして、適切な戦術の概要と問いかけのポイントをまとめたのが、以下の図表1である。それぞれのポイントについて自問することによって、チームメンバーが培養の戦術を自分の仕事に取り入れる機会について考える一助となる。
リーダーはこの情報を共有することで、新しいチームの立ち上げ、あるいは規範や業務プロセスを見直すチームの「再立ち上げ」の一環として、議論を始めるきっかけにすることができる。これらをすでに実践しているチームも、リーダーが自分たちの戦術を認識し、名前をつけ、実践の継続を促すことで、さらに前進できるだろう。