●お悔やみの言葉はシンプルに伝える

 誰かが死別の悲しみを抱えている時は、その苦痛を和らげてあげたいと考えるのが人情だ。その結果、赤ちゃんを亡くした同僚に対して、お決まりの言葉を投げかけてしまうことがある。たとえば、「どんな痛みも時間が解決してくれる」「子どもなら、またできる」「気持ちはよくわかる」と声をかけるのだ。

 だが、この類の言葉は、たとえ善意によるものであっても、本人の助けにはならない。相手の死別体験を過小評価し、ますます孤独を感じさせかねないからだ。

 それよりも、シンプルなお悔やみの言葉を述べるだけに留めるのがよい。根掘り葉掘り、事情を尋ねてはいけない。たとえば、次のように言うことができるだろう。「お悔やみ申し上げます。私にできることがもっとあればいいのですが……。もし、話し相手がほしかったり、何か私にできることがあったりすれば、いつでも声をかけてください」

 また、花を贈ったり、関連の団体に寄付したりするのもよいだろう。母子の健康向上に取り組む慈善団体「マーチ・オブ・ダイムズ」や、墓地に木を植える活動を行っている団体などが、その候補になるだろう。

 忘れてはならないのは、赤ちゃんを亡くしたことは、家庭の危機でもあるということだ。悲嘆に暮れる親は、想像を絶するような決断を下さなくてはならず、痛みを伴うコミュニケーションを次々と行わなくてはならない。そこで、実用的な支援を考えてもよいだろう。たとえば、家に食事を届ける活動を行うことができる。

 ●職場復帰について柔軟に対応する

 赤ちゃんを亡くした社員がどのような状況に置かれているかは、それぞれ異なる。あなたの会社には正式な忌引休暇制度があるかもしれないが、いつ、どのように職場に復帰するかを、本人主導で決められるようにすることが最善だ。

 職場には、子どもと死別したことを思い出させる引き金となる要素が、至るところにある。赤ちゃんを亡くした社員は、職場に復帰する前に時間が必要な場合もあるだろう。妊娠中の同僚、職場での出産前の妊婦を祝う「ベビーシャワー」、同僚のデスクに飾られた赤ちゃんの写真などは、ことごとく、亡くした赤ちゃんのことを思い出し、耐え難い思いがこみ上げるきっかけになりうる。

 なかには、早い段階で職場復帰することを希望しつつも、最初のうちは短時間勤務に留めて、段階的に勤務時間を増やしていきたいと思っていたり、しばらくは在宅勤務したいと思っていたりする人もいるかもしれない。

 臨床心理士のドナ・ロザート博士も言うように、自分が得意としていて、ある程度自分で物事をコントロールでき、努力が成果につながるような仕事を再開することで、満足感を得られる人もいる。「赤ちゃんを亡くすのとは正反対の経験ができるためです。わが子を失う過程では、自分でコントロールできないことがあまりにも多いので」と、ロザートは指摘している。

 また、仕事に取り組むことで、少なくともその時間は、子どもを亡くした経験以外のことに意識を集中させることができる。

 はっきり言えるのは、画一的なアプローチではうまくいかないということだ。職場復帰の進め方について本人と話し合い、当事者の望むスケジュールと方法で仕事を再開できるようにしよう。