最も影響を与えた論文

 我々は2022年4月に読者に対しインスタグラムで「HBRに掲載された論文で、あなたの生き方や働き方を変えたものはどれですか」と尋ねた。以下はその回答である。

 

What Is Strategy?

「『新訳』戦略の本質」

 ハーバード・ビジネス・スクールの教授であるマイケル・ポーターは、1996年にHBRに掲載されたこの論文で、業績を左右する基本的かつ極めて異なる2つのドライバーである業務効果と戦略との違いを概説している。企業にとって業務効果は利益率を高めるのに必要であるが、長期的な成功を実現するためには十分ではない。であるならばいったい、戦略とは何なのか。

 ポーターは、他社にとって対抗しがたい活動システムを土台とした、独自の有益なポジションを選ぶことにより、競争優位を打ち立てることであると説く[注1]

 

How Will You Measure Your Life?

[名著論文再掲]「プロフェッショナル人生論」

 HBSの教授であった故クレイトン M. クリステンセンは、個人としての生活を職業人生と同じように厳密に考えるべきだと信じていた。

 2010年に掲載された論文では、そのために3つの質問をすることを提案している。それは「どうすれば幸せなキャリアを送れるか」「どうすれば幸せな人間関係を築けるか」「どうすれば誠実な人生を送れるか」である。クリステンセンは、この過程からみずからが得たいくつかの教訓をこの論文で共有している。そのなかでも、「他者を育成することで得る報酬に勝るものはない」は特筆すべきであろう。

 

Manage Your Energy, Not Your Time

「活力管理法」

 時間の管理については盛んに議論されるが、むしろ活力を最大限に高めれば良質な仕事をより多く行うことができる。トニー・シュワルツとキャサリン・マッカーシーは2007年に掲載されたこの論文において、「長時間労働の本質的な問題は、時間という資源が有限であることだ」と記している。しかし「活力となると話は別」であり、それは、活力はいくつかの簡単な方法によって構造的に増大でき、その恩恵を受けることができる。

 

Managing Oneself

「自己探求の時代」

 チームや会社のマネジメントができるようになるためには、自己のマネジメントを学ぶ必要がある。1999年の古典的な論文において、ピーター・ドラッカーは普通の労働者から並外れた業績があげられる人間へと変身するために、自己の強みと価値をどのように評価するか、もともと備わっているスキルをどのように伸ばすか、を説明している。

 

Management Time: Who's Got the Monkey?

「マネジャーが時間管理の主導権を取り戻す法」

「マネジャーが常に時間に追われる一方で、部下たちはたいてい時間を持て余しているのはなぜか」と企業幹部のウィリアム・オンケン・ジュニアとドナルド L. ワスは1974年に掲載された権限委譲に関するこの論文の冒頭で尋ねている。

 マネジャーは、部下に任せるべき仕事をみずから引き受けすぎていないか。それはある意味で、部下のために働いていることにならないか。著者はなぜマネジャーが「サル」を背負い過ぎるはめになるのか、サルをどのように背中から降ろすべきかを分析している[注2]

 

[注]
1)邦訳の初出はDHBR1997年3月号。リンク先は新訳としている。

2)HBR1974年11-12月号に掲載された本稿は、1999年のHBRに再掲された。リンク先となる「マネジャーが時間管理の主導権を取り戻す法」(DHBR2022年3月号)は、1999年に併載されたスティーブン・コヴィーの解説も合わせて翻訳掲載したもの。