(3)判断に影響を与える環境要因を調整する
環境は、質の高い意思決定をサポートしてさらに向上させるというような、組織の採用活動に影響を及ぼすことがある。時間帯、室内の配置、部屋の温度のように些細に思える要因であっても、これらはすべて、意思決定プロセスに影響を与えうるのだ。
私たちは誰しも、選択アーキテクチャを実践できる。選択アーキテクチャとは、意思決定者に選択肢を提示する方法を設計することだ。
たとえば、意思決定のタイミングも選択肢の一つだ。昼食前に候補者の評価を依頼すると、空腹のために評価が厳しくなる可能性が高い。一方、午前中の早い時間帯で、頭の回転が速く、リラックスしていることが多いタイミングに依頼すると、好意的な評価になる可能性が高い。
面接の時間帯を変更することは、心理学の原則を利用して、行動によい影響を与える方法の一つだ。自分がリラックスできて、エネルギーを感じられそうな時間帯を予測して、あらかじめカレンダーをブロックしておけば、その時間帯に候補者の評価を行うこともできるだろう。
自分の意思決定に対する自信をさらに深めるには、週の初めに判断を下し、週の終わりにもう一度、同じことについて判断する。その時点で、次のように自分に問いかけてみることだ。自分の考えは進化したか、あるいは判断は以前と変わらないか。
(4)デフォルトとされているルールを覆す
デフォルトとされているルールは、個人と社会の幸福を支援したり、向上させたりする時もある。しかし、誰も疑問を持たない手法は、往々にして固定したバイアスに則っていることが多い。リーダーとして採用する女性やマイノリティの数を増やそうとすると、既存のルールがじゃまになる場合がある。
筆者が協働した、ある中規模のテクノロジー企業は、そのようなことが自分たちに起きていることを知って愕然とした。昇進のパターンを評価するにあたり、彼らは女性やマイノリティに有利なパターンが見つかると思っていたが、結果はその逆だった。その会社ではいつも、いくつかの同じ属性のグループに所属する従業員を昇進させていた。
昇進に関する意思決定を改革するために、このテクノロジー企業ではデフォルトをひっくり返した。昇進を例外にするのではなく、当然のルールとしたのだ。つまり「ある従業員を昇進の対象から除外すべきだ」という説得力のある説明ができない限り、全員を昇進させる。つまり、昇進に関する説明責任が追加されたのである。
さらに、意思決定者が「対象からの除外」を主張する際は、該当者の写真を渡されて、人物を名前で呼びながら、昇進させるべきではない理由を説明することにした。このアプローチにより、候補者の取り組みと成果について、より詳細で堅実な議論が行われるようになった。
このアプローチは、形を変えて採用にも適用できる。たとえば、6人の採用枠に30人の候補者がいるとしよう。まず、それぞれの候補者を「安全、中立、危険」のいずれかに分類する。また、採用対象者の多様性を確保するためにそれぞれのコホート、すなわち同じ属性のグループから2人ずつ選ぶ。
この方法は、株式投資のポートフォリオに多様性を持たせる際のロジックに、よく似ている。時期やサイクルが異なれば、際立って見える特徴も異なる。
コホートモデルを導入することで、従業員が助け合い、コラボレーションを促進することにつながる。このような意思決定を行えば、多様性を高めることができるだろう。従来であれば除外したかもしれない採用候補者に対して、評価者がリスクを負うことになるからだ。