レイオフに踏み切る前に選択肢を検討する
人的リソースを有効活用する「ワークフォースマネジメント」には、複数の同時進行の戦略が必要だ。レイオフを行うのに最も適したタイミングは、組織再編や恒久的な改革が必要な時である。一時的な景気後退の場合は、従業員の能力やモチベーションを向上させるパフォーマンスマネジメントを行いながら、無給休職命令や社内配置転換を選択するほうがよいかもしれない。
2000年代にハネウェルの再建に携わったデイビッド・コートは、世界的な景気後退の中、レイオフではなく無給休職を利用してコスト削減を図った。従業員の雇用を守ったおかげで、ハネウェルは製品開発を継続することができ、2009年から2012年までの3年間の株主総利回りが75%となり、最も近いライバルのGEを20ポイント以上も上回った。コートは、不採算事業から撤退する際には、躊躇なく大規模なレイオフを実施した。また、成長分野では戦略的な採用を行い、会社で働く人々が、働いてもらいたいと思える人材であり続けるよう、一貫してパフォーマンスマネジメントに注力した。
公正な判断をする
調査によると、従業員は、レイオフの公正さを誰が解雇されるかによって判断しているという。年功序列や「後入れ先出し」のようなわかりやすい基準なら説明がしやすいかもしれないが、現実はそんな単純なものではない。勤続年数の長い従業員に縛られずに、新しい従業員を残したい場合もあるだろう。
従業員の業績は、レイオフを行う直接的な理由ではないものの、解雇する個人を選定するもっともらしい理由として一般的に受け入れられている。しかし、相対的な業績に基づいて、従業員を公正にランク付けするのは難しい。
ある実験では、被験者に、25人の従業員のプロフィール、業績評価、欠勤の記録、年功序列、社内異動が可能なスキルを持っているかどうか、さらに従業員の性別、人種、年齢などの人口統計学的属性を提供した。その結果、「レイオフの決定に業績が関係していることを裏付ける結果は得られなかった」。むしろ、「経験、業績、スキルがあっても、属性や資質に基づいてレイオフが決められている場合が多かった」。
解雇後のデータを分析した研究によると、意図しない無意識の偏見によって、管理職が自分と似た人を残し、苦労して採用した女性や社会的地位の低い従業員の数を失う可能性がある。それは、人口統計学的属性に留まらない。「最高のアスリート」を残したいという願望は、持病のある人や産休中の人が解雇されるケースが多いことにも表れている。付き合いにくいと思われている人や、上司から気に入られていない人も、業績に関係なく、解雇されやすい。
レイオフを決行する場合、公正さを保つために実践できる3つの方法が研究によって示されている。第1に、熟考する時間を十分に確保することだ。ある調査によると、人事部の幹部は、レイオフの候補者一人につき1時間未満しか時間を割かず、その結果、少なくとも20%の人を誤って解雇してしまったと考えていた。第2に、候補者を公正に選定するために、マネジャー複数人と人事部の代表者のチーム体制で、レイオフ候補者リストを確認することである。第3のベストプラクティスは、レイオフ候補者のプロフィールをリアルタイムで追跡できるシステムをつくることだ。これによって、部署、部門、会社全体のレベルで確認できるようになる。
レイオフでは、誰を解雇するかと同じくらい、誰を残すかが重要になる。マネジャーには、レイオフ候補者の最終リストができるだけ多くの角度から見て公正であることを確かめつつ、残したい人を守るために行動することが認められなければならない。