国際化は大して進展していない

 古代ギリシャ人にとって「黙示録」(新約聖書における啓示)とは、大衆には隠されたことを一部の特権階級だけが知っていることを意味した。またその聖書には、現在から未来にかけて大変動を伴う急激な移行が起こると記されている。

 グローバリゼーションに関する著名な研究を見ると、その大半が黙示録的であり、聖書と同じような予言が書かれている。「グローバリゼーションの黙示録」という見解は、ハーバード・ビジネススクール名誉教授だった故セオドア・レビットが1983年にHBR誌に寄せた「地球市場は同質化へ向かう」にまでさかのぼることができる。

 しかし、グローバリゼーションを扱った書籍は、90年代には500冊にも満たなかったが、2000年からの5年間で5000冊を超えており、いまや粗製濫造の感に堪えない。

 我々は本当にそのような大変な時代を迎えているのだろうか。グローバリゼーションによる大変動といえば、国境が消滅して市場が統合され、国際化が限りなく100%に近づく様子が思い浮かぶ。

 しかし、国境を超えた完全な統合など、的外れもいいところである。国境に妨げられることなく展開されるはずの経済活動のほとんどが、いまだに国内に集中している。通信、マネジメント研究、寄付、あまつさえ貿易でさえ、国際化の進展度は100%どころか、10%前後にとどまっているのだ(図表「国際化の進展度」を参照)。