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米国ではどのような記事に注目が集まったのか
2025年は、AI、関税、経済、その他のあらゆる面において、不確実性に満ちた年だった。HBR.orgで最も読まれた記事の多くは、こうした世相を反映しており、意思決定の課題、DEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)の未来、そしてAIの予期せぬ影響に関する記事がトップ10に並んだ。
この記事のリストからは同時に、『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)の読者がレジリエンスと先見性を求める姿勢が窺える。戦略の伝え方、1on1ミーティングの実施方法、そして新しいテクノロジーと働き方を改善する方法を優先事項として模索していた。また、喜びや勇気といった感情を育むことの大切さも、あらためて浮き彫りになった。2025年に最も読まれたHBRの記事トップ10は以下の通りである。
※なお、日本の読者の注目を集めた記事のランキングは「2025年のDHBR人気記事ベスト10」を参照のこと。
10位 戦略の天才としてのテイラー・スウィフト
『ハーバード・ビジネス・レビュー』 シニアエディター ケビン・エバーズ 著
テイラー・スウィフトは、20年にわたり音楽業界のトップに君臨してきた。彼女の長期的な成功の秘訣は、4つの行動に集約される。それは、未開拓の市場をターゲットにすること、粘着性(スティッキネス)を生み出す機会を見つけること、生産的なパラノイアを維持すること、そしてプラットフォームの劇的な変化に適応することである。
彼女が行ってきた洗練された戦略を研究することで、ビジネスリーダーはイノベーション、再発明、そして戦略的思考に関する貴重な教訓を得ることができる。
9位 DEIへの逆風が強まる中、リーダーが示すべき新たな方向性
戦略家、コンサルタント リリー・チェン 著
公正性(Fairness)、アクセス(Access)、包摂性(Inclusion)、代表性(Representation)という核となる成果を中心に構築された「FAIRフレームワーク」は、DEIに新たな方向性を提示する。
現在、主流となっているパフォーマンス重視で個人中心、孤立しているゼロサム的なアプローチの代わりに、FAIRは成果ベース、システム重視、連合主導、そしてウィン・ウィンの関係であることに焦点を当てる。これにより、すべての従業員のニーズに適切に対応し、意味のある永続的な変化をもたらすことができる。
8位 不確実な時代、決断を下す前にこれらの質問を自分に投げかける
ディサイシブ 創業者兼CEO シェリル・ストラウス・アインホーン 著
今日のように永続的な危機に瀕する世界において、安定を待つことは、けっして来ない列車を待つようなものである。周囲のすべてが不安定に感じられる時、以下の4つの質問が、曖昧さを切り抜け、リスクを再定義し、意思決定の筋力を鍛えるための戦略的ツールとして機能する。(1)今日の決断のうち、1年後も依然として理にかなっているものは何か。(2)もし1年後にこの決断が我々のリーダーシップの例として使われたとしたら、それは何を教えることになるか。(3)もしこれが「嵐」ではなく「気候」(常態)だとしたらどうか。(4)待つことのコストは何か。
7位 戦略は一枚のビジュアルにまとめなさい
ポルトガルカトリック大学 リスボンビジネス経済学院 助教授
ジョアン・コッター・サルバド、ロンドン・ビジネススクール 教授 フリーク・バーミューレン 著
なぜ投資家は、一部のCEOのプレゼンテーションには好意的に反応し、他のものには反応しないのか。買収に関する654件のプレゼンテーションを分析した結果、際立った要因が一つ見つかった。それは、取引の戦略的論拠を説得力のあるビジュアルで示しているかどうかであった。この論考では、戦略の伝達において、なぜビジュアルがそれほど重要なのかを説明し、従業員と投資家の双方から賛同を得られるビジュアルの作成方法を解説している。
6位 あなたの仕事を効率化する、専用AIアシスタントのつくり方
テクノロジーに関する講演家、データジャーナリスト アレクサンドラ・サミュエル 著
生成AIを頻繁に利用するユーザーにとって、似たようなタスクや繰り返しのタスクのために、同じ背景ファイルやプロンプトを何度も何度もアップロードするプロセスは、煩わしいものになりうる。しかし、多くの生成AIプラットフォームでは、それらの要素を保存して繰り返し使用できるカスタムAIアシスタントの作成が可能である。そのためには、まずプラットフォームを選択し、その基本的なインターフェースで実験を開始することから始めよう。学んだことを活用してボットのカスタム指示を作成し、目的のタスクを実行するために必要なファイルをアップロードする。使いながら、継続的に改良を加えていく。
5位 多忙の中に喜びを見出せる人は、どのように余暇を過ごしているのか
ハーバード・ビジネス・スクール 教授 レスリー A. パーロウ
ハーバード・ビジネス・スクール シニアリサーチャー サリ・メンツァー、
ニューヨーク大学 スターンスクール・オブ・ビジネス 助教授 サルバトーレ J. アフィニート 著
喜びは、達成感や意味深さと並び、満足のいく人生を送るための3つのカギの一つである。しかし、多忙で野心的な多くの個人にとって、それは欠けた要素となっている。自由な時間からより多くのものを得るためには、以下の5つのことが大切になる。(1)他者と関わること、(2)受動的な過ごし方を避けること、(3)情熱に従うこと、(4)活動を多様化すること、(5)自由な時間を守ること。
4位 1on1ミーティングのやりすぎが組織を分断する
ナバレント 共同創業者兼マネージングパートナー ロン・カルッチ 著
ほとんどの大組織において、CEOやシニアエグゼクティブの典型的なスケジュールは1on1ミーティングで埋め尽くされている。しかし、企業のトップレベルにおいては、これらのミーティング構造そのものが、組織の利益に反するように働いている。その解決策が、エグゼクティブの時間の使い方を再設計することだ。業務上の議論をするために1on1ミーティングを行うのではなく、価値が実際にどのように創造されるかを反映した、1対2または1対3の対話である小規模なクロスファンクショナル(部門横断的)な対話を招集すべきである。
3位 Now Is the Time for Courage(未訳)
ハーバード・ビジネス・スクール 教授 ランジェイ・グラティ 著
不安定で不確実な時代において、多くのリーダーは行動を躊躇し、なかには立ちすくんでしまう者もいる。この論考では、以下の5つの戦略を採用することで、誰もが勇気を持つことを学べる、そして学ぶべきであると主張している。(1)混乱の中を導く助けとなるポジティブな物語(ナラティブ)を作成する。(2)メンタルツールの備えを拡大し、自分がコントロールできることに集中することで、トレーニングと準備を通じて自信を築く。(3)複雑で曖昧な状況を段階的に把握し、理解が深まるにつれて進路を調整する。(4)味方、メンター、批評家の助けを借りる。(5)セルフケアを実践し、ルーチン(儀式)を取り入れ、状況をより前向きに捉え直すことで、冷静さを保つ。
2位 この1年で生成AIの使われ方はどう変化したか
フィルタード・ドットコム 共同創業者兼CEO マーク・ザオ=サンダース 著
この1年間で、生成AIをめぐる熱狂は大いに高まった。ユーザーの関心は倍増し、AIへの投資は急増しており、政府はより明確で力強い立場を取り、そのリスクは──一部の人によれば人類の未来がかかっているというほど──最高潮に達している。しかし、人々は実際にどのように生成AIを活用しているのだろうか。データが示す上位のユースケースは、セラピーと話し相手(カンパニオンシップ)、生活の整理、そして目的の発見であった。
1位 AIが生成する「手抜き仕事」で同僚の仕事を増やしていないか
ベターアップ・ラボ バイスプレジデント ケイト・ニーダーホッファー
ベターアップ 最高プロダクト責任者兼最高イノベーション責任者 ガブリエラ・ローゼン・ケラーマン らによる共著
職場で生成AIの使用が急増しているにもかかわらず、ほとんどの企業ではROI(投資利益率)をほとんど達成できていない。考えられる理由の一つは、AIツールが「ワークスロップ」(仕事のゴミ)を生成するために使われていることである。これは、見た目は洗練されているが中身がなく、認知労働を同僚に押しつけるようなコンテンツを指す。ベターアップ・ラボとスタンフォード大学の研究によると、労働者の41%がそのようなAIに生成されたアウトプットに遭遇しており、1件あたり約2時間の手戻りコストを発生させ、下流工程での生産性、信頼、コラボレーションの問題を引き起こしているという。
"The 10 Most Popular HBR Articles of 2025," HBR.org, December 24, 2025.






