昇進の空きがない時、優秀な部下をどう支援するか
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サマリー:優秀な部下が昇進を期待しているにもかかわらず、その機会を用意できない状況は、組織の流動性が低下するなかで珍しいことではなくなっている。部下の期待と現実のギャップをどう管理するかは、リーダーにとって難しい課題だ。本稿では、昇進が難しい状況でも優秀な人材にキャリアの前進を実感させるための6つの戦略を紹介する。

優秀な部下を昇進させるための空席がない時

 その人はあなたの部下の中でも最も優秀な人材の一人であり、あなたの成功に大きく貢献してきたディレクターだ。経験豊富で、戦略的で、さらに大きな仕事をする準備ができている。ところが、彼らが進めるポジションがない。エグゼクティブの席に空きはないし、明確な昇進の道筋もなく、横方向の異動もなさそうだ。このように、明白な次のキャリアパスが存在しない時、どうすればその人が次のステップを見つけるのを助けられるのか。どのような会話をすべきか。そして、その間に彼らが辞めてしまわないようにするにはどうすればよいのか。

専門家の意見

 有望な人材は昇進を期待している。それは彼らの努力に対する正当な報いであり、ごく当然に思われる。問題は、その期待に応えられないことだ。期待と現実のギャップを管理することは、リーダーの最も難しい仕事の一つであり、しかもこうした状況はますます一般的になっていると、調査会社ワークプレース・インテリジェンスのマネージングパートナーであるダン・シュワベルは指摘する。シュワベルには、Back to Human: How Great Leaders Create Connection in the Age of Isolation(未訳)などの著書がある。「最近の雇用市場は、『しがみつき雇用市場』(job-hugging job market)だ」と彼は言う。次の仕事が見つからないことを恐れて、多くの人が現在の仕事から動きたがらないというのだ。「雇用の流動性が低下して、成長しても就けるポジションがない」

 だが、キャリアの成長には必ずしも肩書きの変更が必要なわけではない。リーダーの仕事は、責任範囲を広げたり、新しいスキルを身につけさせたり、より多くの人の目に触れる機会を与えたりすることによって成長を後押しすることだと、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のアンソニー・クロッツ教授は言う。クロッツは組織心理学の専門家で、ちかく著書Jolted: Why We Quit, When to Stay, and Why It Matters(未訳)が刊行される予定だ。「人は自分に投資してくれる組織に忠誠を抱く傾向がある。ただ、この投資は幅広い意味がある」とクロッツは言う。「彼らは、自分のキャリアが停滞しておらず、上昇していると感じられる必要がある」。そのための方法を紹介しよう。

まず、率直に状況を説明する

 その人に、当面昇進はないと伝えるのは憂鬱かもしれないが、相手はすでに状況の雰囲気を察している可能性が高い。「あなたはただ、相手がすでに知ってることを追認するだけでよい。雇用市場がタイトで、皆いまのポジションから動こうとしない、とね」とシュワベルは言う。ただし、できるだけ透明性を持って伝えることが重要だ。何が起きているのか、それを引き起こしている要因は何か、そしてそれがどれくらい続きそうかを伝える。「流動的な要素が非常に多く、半年後、場合によっては2年後にも空きが出ることを約束できない」

 背景情報を示すことも有効だと、クロッツは言う。過去20年間のシニアレベルの離職率を調べ、それを最近の状況と比較してみよう。その結果、現在あなたの組織では離職率が低いことを示せば、相手が状況(つまり、彼らのパフォーマンスに問題があるのではなく、外的制約が原因であること)を理解する助けになる。「彼らが特別冷遇されているわけではない」とクロッツは言う。「『こんなの不公平だ』から、『そういうことなのか』へと認識をシフトさせる会話をすべきだ」

その上で、耳を傾ける

 しかし、相手がすぐに納得するとは限らない。彼らはその仕事に労力を費やしてきたのだ。会社がそれに報いてくれないのは約束を果たしていないと感じたとしても無理はない。「昇進は、キャリアの成功を測る主要な指標になっている」とシュワベルは言う。「彼らはリンクトインに書き込めるような昇進を求めている」。だからこそ、昇進させるポジションの空きがないことを伝えたら、黙って耳を傾けるべきだと、クロッツは言う。相手がどのように反応するかはわからない。安堵かもしれないし、怒りや失望かもしれない。押し黙ってしまうかもしれない。「あなたはその相手をサポートしていて、提案も用意していても、まずは君の考えを聞きたいと伝えるべきだ」と彼は言う。「相手がどのように感じていて、どのようなことが助けになるかを正直に話せる余地を与えるべきだ」

質問をする

 相手は、あなたが告げたことを理解するのに時間が必要かもしれない。だが、相手の準備ができたようならどのような課題に取り組みたいか尋ねることを、クロッツは勧める。「あなたがその相手のキャリアアップにコミットしていることを示せる」。シュワベルも、まず何よりも相手が何を望み、どこに野心を抱いているかを理解することを優先すべきだという。「もし相手が、『次のレベルに行きたい』とか『あなたのポジションが目標だ』と言ったら、深く掘り下げてみよう」。つまり、「どのような問題解決に取り組みたいのか」と聞いてみる。「仕事のどの部分に意欲を感じるか」「どのような能力で知られるようになりたいか」といった質問でもよい。

 リーダーであるあなたが目指すべきは、相手のいらだちを、方向感覚に変えることだ。「たとえいまは空きがなくても、将来空きが生じうるポジションと、相手が求めているポジションを照らし合わせていくのだ」