あらゆる業界において、マーケターにはブランドの役割を再定義するチャンスがある。マスメディアは長年にわたり、「放送者と視聴者」という関係で定義されてきた。医療では「医師と患者」、教育では「教師と生徒」。どの産業でも、共創と協働に根ざした新しい関係を築くチャンスがある。

 その手始めに、あなたの会社のブランドは今日、人々とどんな関係にあるかを考えてみよう。その答えを、社会関係上の役割として定義する。たとえば医療サービス機関なら、ブランドの関係性はおそらく「医師と患者」だろう。

 次に、外の業界にある別の関係性を参考にしてみよう。たとえば医療に取り入れられるものとして、教師と生徒(教育のため)、コーチと選手(動機づけのため)、ガイドと旅行者(案内するため)などがある。そして、対称的な関係性にも必ず目を向けよう。友人同士、ご近所同士、共創者同士などだ。

 もう1つの方法は、自社が理想とする関係から遡っていくことだ。まず自社製品の価値とメリットを考える。そして、それと同じようなメリットを提供しうる人間関係をイメージするのだ。

 たとえば、ネストのサーモスタット(温度自動調節装置)は室温をユーザーの好むように自動調節し、火災時には煙探知機能がユーザーを安全な場所へと冷静に導いてくれる。すなわち同社は、機器メーカーにありがちな「製造者と購入者」という関係ではなく、「家族の一員」としてユーザーを注意深く見守るという役割をブランドに担わせているのだ。

 ネストCMOのダグ・スウィーニーはこう語る。「当社がイメージしているのは、テレビアニメ『宇宙家族ジェットソン』に出てくるようなスマートホームではありません。より人間的で、中にいる人とその周囲の世界を大切に世話する家を考えています」

 最後に、自社のブランドの役割を、一方向的、非対称的、取引ベースのものから、互恵的、対称的、個人的なものへと変える方法を見出そう。それによって、顧客とブランドが分かち合う「共通の意義」を主軸とする戦略的ナラティブ(自社の存在理由を示すストーリー)に命が吹き込まれる。今日のブランドイノベーターを手本にすれば、顧客エンゲージメント、ロイヤルティ、差別化をいっそう強化できるだろう。


HBR.ORG原文:Build Your Brand as a Relationship May 09, 2016

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マーク・ボンチェク(Mark Bonchek)
シフト・シンキングの創設者兼最高洞察責任者(Chief Epiphany Officer)。デジタル時代を生き抜くための思考変革を支援する。

 

カーラ・フランス(Cara France)
ザ・セージ・グループのCEO。サンフランシスコ・ベイエリアの企業にマーケティングとコンサルティングのプロフェッショナル人材を紹介している。優秀なマーケティング担当幹部を表彰するマーケターズ・ザット・マター賞の創設者。