結論は次の通りだ。現実的で実用的な思いやりの行動は、人のためになり、ビジネスのためにもなる。思いやりの行動は、それを行う人にも有益である。それは、実態のある行為であればあるほどよい。

「向社会的」行動(「反社会的」行動に対する)の研究者は「ヘルパーズハイ」、あるいは意地悪く「不純な利他主義」と呼ばれる行動が持つ力に注目している。他人のために何かをしたときの満足感は、自分自身にも利益をもたらすのだ。

「真に利他的な行為を行うのは難しい」と、ヒューストン大学のメラニー・ラッド教授は言う。「思いやりの行動を取った後は、常に自分が誇らしく思えるからだ」。

 いまはたしかに辛く厳しい、不安なときであり、この状況が改善する前にさらに悪化する可能性もある。ニュースで取り上げられる一部の人による無謀な振る舞いに首を横に振り、自社が役立てることが何もないとお手上げ状態になっている人は、レベッカ・ソルニットの本とハンコック銀行の教訓を参考にして、少しでも事態を改善するために、あなたや同僚にできることはないか模索してみよう。

 ソルニットは研究の一環で、第二次世界大戦後に誕生した学問分野、現代災害学の大家であるチャールズ E. フリッツの研究を分析し、その考え方に驚いた。

 最も「革新的な前提」として、フリッツのこの考え方を取り上げている。「日常生活はすでに一種の災害であり、実際の災害は我々をそこから解放する」。なぜなら災害は、人々にそれぞれの最も素晴らしい部分を表現するチャンスを与えるからだ。フリッツは、災害時の「個人と社会のニーズの融合」は、「通常の状況ではめったに得られない、帰属意識や一体感をもたらす」と述べている。

 だから、苦難の時にあなたの会社の、そしてあなた自身の最も素晴らしいところを、恐れることなく発揮してほしい。


HBR.org原文:How Bad Times Bring Out the Best in People, March 20, 2020.


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