(3)必要なら「能動的に」戦略を転換する

 ターゲットとしている市場が、コロナ後は十分な規模を期待できそうにないと判断したら、戦略の転換が必要になるかもしれない。私たちもそうだった。

 私たちは創業から5年間、ヒスパニック系の患者に医療サービスを提供している米国の病院システムに翻訳とマーケティングサービスを販売して、何とか経営を続けた。健康情報に熱心なスペイン語圏の市場が5億人規模に拡大するまで、時間を稼いだのだ。

 戦略を転換する場合は、早めに、能動的に、慎重に転換することが肝心だ。スタートアップが戦略を転換する例は最近のメディアでも数多く紹介されているが、彼らの場合、生き残りをかけて必死にもがく過程での受動的な行為だ。

(4)ビジネスモデルをマッピングする

 新型コロナウイルス感染症にインスパイアされたイノベーションの多くは、無料で提供されているか、寄付に支えられている。緊急時には妥当なことだろう。

 ただし、これらのスタートアップのリーダーは、新型コロナウイルス感染症を軸としていない非営利団体への寄付が減少していることを忘れてはならない。今日の経済状況を考えると、寄付に依存する組織を長期的に維持することは、おそらく難しいだろう。

 新型コロナウイルス感染症に関連するイノベーションは、社会起業に特有の収益モデルを検討すべきだ。社会的企業には、ソーシャルインパクト(社会的影響力)と財務的な成長という2つの使命がある。

 これらの並行する目標を達成するために、さまざまなビジネスモデルが開発されている。たとえば、ドア開閉用の「衛生フック」を発明したイギリスのイノベーターは、「1つ売れると1つ寄付する」という販売モデルを採用している。

 ビジネスモデルのマッピングに取り組む起業家は、今回と同じように多くの企業が事業の再考を余儀なくされた、過去の経済的混乱に学ぼう。たとえば、2008年の「大不況」の際に、マーク・ジョンソン、クレイトン・クリステンセン、ヘニング・カガーマンは共同で、ビジネスモデルを再構築するためのフレームワークを提言した。当時と同じように、今日も重要なフレームワークだ。

 起業家はこのフレームワークを使って、自社のカスタマー・バリュー・プロポジション(顧客提供価値)、利益方程式、価値を提供するための主要な経営資源とプロセスを定義するとともに、まだしばらくは新しい解決策が必要な未来を進んでいこう。

 今回のパンデミックは、危機がイノベーションと機会を生むという格言を、あらためて裏づけた。第2次世界大戦が史上初のプログラム可能なデジタル・コンピュータを生み、強力瞬間接着剤のような予想外の発明をもたらしたように。

 新型コロナウイルス感染症にインスパイアされた大勢の起業家の中で、長期的に成功するような製品やサービスを生み出しているのは誰か、いまはまだわからない。しかし、上記のステップを踏まえることにより、より多くのイノベーションが、今後何年、何十年と使われるようになるだろう。


HBR.org原文:Turn Your Covid-19 Solution into a Viable Business, July 02, 2020.


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