●在宅勤務のスティグマと、2つの階級が生まれる文化を警戒する
慎重に事を運ばなければ、リモートワークの選択肢を用意しても、ジェンダーによる賃金格差や昇進機会の不平等を、意図せず拡大しかねない。
スタンフォード大学教授で経済学者のニコラス・ブルームは、リモートワークを利用するのが女性ばかりで、男性はおおむね出社して対面で仕事をする時間を増やしている場合、そして、マネジャーが依然として「週5日出社勤務するのが理想的な従業員だ」という従来の概念を変えずにいる場合、女性は「賃金の公平性」からいっそう遠のくことになりかねないと警告する。
リモートワークとハイブリッドワークが機能するのは、それが在宅勤務のスティグマを払拭し、毎日出社勤務をしない従業員に対するネガティブな評価が生じない時だけだ。
リーダーとマネジャーは、仕事で重要なのはどこに行くかではなく、何を達成するかであることを理解しなければならない。企業は、オフィスワーカーとリモートワーカーの賃金と昇進率を定期的に分析し、透明性を確保するとともに、そこに格差が忍び込むのを防がなければならない。
リモートワークを選択する従業員には、リモート環境での異なる仕事のやり方を踏まえて、期待される成績と評価基準を定める。マネジャーはまた、あらゆる働き方について公平な視認性を確保するために、コミュニケーションの新たなルーチンを検討する必要があるだろう。
加えて、企業は求人情報や採用資料の中で、柔軟なリモートワークの就労形態について強調すべきだ。女性(と男性)は、リモートで柔軟に勤務できる就労形態があれば、応募人数も増え、採用後も長く会社に留まる可能性が高くなる。
公平な賃金と福利厚生、昇進機会を提供することで、このような就労形態を常態化するとともに、出社勤務と平等の対応を取ることができる。求人広告や企業情報に、入社時の契約金、新しいスキルや資格を得られる研修、そして昇進機会を明記すれば、新しい仕事のあり方を推進できるだろう。
リモートワークという柔軟な就労形態を導入すれば、これまで地理的理由からアプローチが難しかった労働市場にも手を伸ばし、優秀で多様性のある人材を活用できる道が開けるはずだ。