営業のあり方が変わりつつあります。『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』の最新号(2023年1月号)では「営業組織を強化する」という特集を組み、これからの営業組織に必要なデジタル化への対応や顧客との付き合い方について考察します

営業に必要な未来志向の能力

 営業のあり方が変わりつつあります。営業職の求人情報2万件以上の分析をしたHBRの記事によると、これまで必要とされてきた資質やスキル(営業経験やコミュニケーション能力、好奇心等)のほかにも、新たに5つの能力が求められているといいます。

 それが「顧客の未来を予測する能力」「社内外とのコラボレーション能力」「データの力を引き出す能力」などで、総称して「未来志向の能力」と述べられています。

 一見わかりにくいですが、要するに、多様で高度な顧客のニーズを満たすために、デジタル技術やデータを活用しながら、社内外のチームと連携して、顧客の成長を支援するということです。旧来の売り込み型の営業から脱し、顧客と未来をともにつくろうとする姿勢が求められているのです。

 そこで今号の特集「営業組織を強化する」では、これからの営業組織に必要な要素を明らかにします。

営業組織を再考する

 特集1本目の論考「営業組織のデジタライゼーションを成功に導く方法」では、マイクロソフトやUCBの事例から、営業組織のデジタル化を成功させるための5つのアクションを提案します。

 特集2本目の論考は、ミスミグループ本社の吉田光伸常務による「ミスミの事業は顧客とともに進化し続ける」です。機械部品の見積もり・製造を自動化するデジタルサービス「meviy」(メビー)の急拡大には、営業組織の抜本的な見直しがありました。顧客の声を受け止めた後に、それを素早く開発、生産、販売に展開する、ミスミ独自の戦略に迫ります。

 特集3本目「営業プロセスへのAI導入が収益向上につながる」ではデジタルツール導入のポイントを述べます。「セールス・サクセス・マトリックス」というフレームワークを用いて、営業プロセスの洗練度と顧客との関係性の深さという2軸から必要なツールの種別を考察します。

 特集4本目「トリプルフィットキャンバス:顧客との価値創造から長期的な利益を生むフレームワーク」では、顧客との価値創造を実現する方法を掲載しています。不振にあえぐ営業組織の多くは、短期志向に陥り、顧客との関係性よりも自社の製品やサービスを優先させているものです。BMW、コニカミノルタ、ギャップの事例から、顧客との良好な関係を築き、維持するための方法を明らかにします。

 また、過去の名著を紹介するHBR Classicsシリーズにおいて、「優れたセールスパーソンの資質」を掲載しました。これは1964年に発表されたHBRの古典的論文で、営業職の資質について、共感力と動因の2つが必須要件であると述べています。いまも昔も変わらない点は何か、一方で変わったことは何か。それらを考えながら読むことで、より営業の本質に迫ることができるでしょう。

 このように、これからの営業は顧客との長期の関係性を見据えながら、その要望に応えるため、みずからの組織を大きく変化していかなければなりません。顧客とともに未来をつくる姿勢がよりいっそう求められているのです。

 ほかにも、HBR100周年連載では、サントリーホールディングスの新浪剛史社長のインタビュー「経営とはサイエンスであり、運を呼び込むアートでもある」を掲載しています。新浪社長がビームの統合を通じて至った経営の境地に迫る、貴重な内容です。

 ぜひご一読ください。

(編集長 小島健志)