専門職(プロフェッショナル)の行動様式を把握する

 今日(1950年代)の労働人口のなかで、最も急速に増えているのが専門職である。アメリカには現在、企業内研究所が、科学に関するものだけに限っても約3000ある。専門職が雇用される領域も確実に広がっている。

 しかし、現在のアメリカで最も不足している人材は専門職であり、当面、需要に供給が追いつくことはないだろう。その原因は、政府部門のみならず、産業界でも、専門職への需要が飛躍的に高まっていることにある。しかもタイミングの悪いことに、30年代の出生率が低水準だったため、専門教育を受けた学生の数が大きく減少している時期でもある。

 このような状況を鑑みれば、産業界は貴重な専門職を厚遇しているに違いないと考えるのも自然といえよう。ところが、専門職の意識調査によると、彼らの士気は何とも低いという。さらにその仕事の中身を調べたところ、この優秀にして高コストで希少な人材が、きわめて非効率に働かされていることがわかった。

 専門職がこのような状態に置かれていることについて、問題は専門職とそれ以外の一般従業員は行動様式そのものが大きく異なるところにある。

(1)専門職ならではの価値基準

 専門性の本質的な部分とは、職人気質と仕事の仕上がりへの客観的基準に代表されよう。そして、これらの基準は通常の事業上のそれとは異なる。

 営業部長が「技術部はいつまで経っても設計を完成させない」とぼやいているのを聞いたことがあるだろう。「彼らは完璧を追求する。そのためにいくら時間や費用がかかってもいっさいお構いなしだ」