魅力に欠ける企業でのキャリア

 若者は、企業でのキャリアに幻滅している。その幻滅の背景にある本当の理由は、一般に思われているよりはるかに重大で深刻だ。給与の面でも、そして何より機会の面でも、若者の就職先としての企業の優位性は大きく失墜している。

 また、企業は知的な期待や知的な主義主張に応えられていない。事実がどうあれ、教養ある若者の目にはそのように映っている。つまるところ、高学歴の若者は、企業の基本的価値観をきわめて物足りないと考えている。

 第2次世界大戦後10~15年くらいの間、企業、特に大企業の初任給以上の給与を、大卒者に支給できる他の雇用主は存在しなかった。企業以外の就職先、特に政府や高等教育機関における給与水準は、底打ち状態からようやく上向き始めたばかりだった。一方、企業の給与はというと、とりわけ新入社員の給与は組合賃金と密接に連動していたとはいえ、急激に上昇していた。

 同時に、企業における雇用機会は、他分野をはるかにしのいでいた。アメリカ企業がおしなべて肉体労働から知識労働へと大いなる転換を遂げたのは、この戦後時代のことである。マーケティングや経理、R&D、人事など、あらゆる分野で、大規模な人員増強が図られた。どの部門も、教育水準の高い人員を大量に求めていたのだ。

 また、企業に就職すれば、他のどの分野より恵まれた昇進機会が用意されていた。30年代から40年代初頭までは、企業での就職口がほとんどなかったため、政府や高等教育機関が就職先として人気を集めていた。

 その結果、第2次世界大戦直後の数年間は政府や高等教育機関では、35年前後に大学を卒業した職員が多く、人手には不自由していなかった。しかも彼らはまだ若く、キャリア形成の途上にあった。