初期の組織設計モデル

 まだ日の浅いマネジメントの歴史において、組織の問題に対する「決定的な答え」が示されたことが二度ある。

 一度目は1910年頃、フランスの実業家アンリ・ファヨールが、彼から見て普遍的に有効な製造会社の機能について考察した時のことだった(「機能」という言葉は、ここでは一般的なマネジメントの意味で使っており、ファヨールが管理上の問題を説明するために使った意味ではない)。言うまでもなく、当時、本当に重要な組織上の問題を呈していたのは、製造業だけであった。

 やがて20年代初期に入り、アルフレッド P. スローン・ジュニアが、GMの組織化に当たり次の一歩を踏み出した。複数の事業部門を抱える大規模な製造会社の組織化に関する「正解」を見出したのである。スローンのアプローチでは、個々の部門の構築は、ファヨールが製造業について定めた職能別組織構造に基づいて行うが、事業自体の組織化は、連邦分権制という概念、すなわち分権化した権限と中央集権化した統制に基づいて行う。GMの組織構造は、40年代半ばには世界中の大規模組織のモデルとなった。

 組織設計者や組織構築者を取り巻く現実に適合しているところでは、ファヨールとスローンのモデルに勝るモデルはない。ファヨールの機能的組織は現在でも、小企業、特に小規模な製造事業を構築する最高の方法である。スローンの連邦分権制も、GMのような単一製品、単一市場の大企業にとって最高の構造であることに変わりはない。

 だが、構造化と組織化を必要としている組織の現実が、これらのモデルに「合わなく」なりつつある。実を言えば、スローンの取り組み──そしてファヨールの取り組み──の根拠となっていた前提自体が、今日の組織が抱える難問に当てはまらなくなっているのである。

5つの組織設計原理

 新たな組織の現実をどのように扱えばよいのか、あるいはその構造的な要求をどのように満たせばよいのか、まだ答えはわかっていない。

 新たな現実に取り組むため、我々はこの20年の間に、ファヨールとスローンのモデルを補完する、その場しのぎの設計上の解決策を編み出してきた。その結果、組織の構築に当たっては、5つのいわゆる「設計原理」、すなわち5つの明確な組織構造を利用できるようになった。このうち、すでに論じた2つの伝統的な構造は長年にわたって組織設計の原理として知られている。