永続的な構造変化

 世界経済、とりわけ世界経済におけるアメリカの位置づけに根本的な構造変化が起こっていることを、大多数のアメリカの企業家が理解していない。この変化は永続的なものであり、アメリカの政策立案者、そして特に企業家たちに、その基本的な姿勢や方針、概念を一新するように迫っている。

 我々はこの事実と向き合う必要がある。以下に、一連の7つの命題を提示したい。

1|1913年、あるいは少なくとも1929年以来、初めて世界経済に「競争」が戻っている。

 第1に、自由世界ではだれでもほしいものをほしいだけ、さまざまな国で多くの供給者から入手し、その対価を支払うことができる。第2に、これら供給者があらゆる市場でビジネスを求めて競争している。

 これは、素晴らしいことだ。ほとんど非現実的ともいえる目標だったとはいえ、これこそアメリカの政策が第2次世界大戦終結以来、目指してきたことにほかならない。

 しかしながら、よいことずくめというわけではない。穏やかならぬ意味合いも含まれている。世界市場では、主要な原材料や製品の「価格体系」がもはや存在しなくなるのだ。

 わずか2年前まで、世界の価格体系は、アメリカ企業が定めた価格とアメリカにおけるコストや市場の状況を基準に決定されていた。アメリカ以外の国々ではおおむね、アメリカの価格に一定の比率を上乗せして価格を設定していた。しかし、ある決定的な出来事によって、世界市場の価格体系全体が崩壊へと導かれた。59年、長い歴史と安定性を誇り、不可侵とさえ思われたメキシコ湾岸地区の原油の基準価格が暴落したのである。