現実の変化がマネジメントも変える

 過去半世紀におけるマネジメントに関する理論と実践を振り返ってみると、その前提となっていた仮定の数々が時代と不整合を起こし始めていることに気づくだろう。

 マネジメントの神髄と認識されてきたものが陳腐化し、現実と乖離し始めたのは、マネジメントが成功した結果でもある。実際この半世紀、マネジメントは科学以上に優れた成功を収めている。

 またより大局的に見れば、とりわけ先進国における社会や経済、そして現在の世界観はマネジメントと部分的に関係しながらも、独自の発展を遂げることで、従来の仮定を陳腐化させている。つまり、経営者の基本的な役割をめぐる客観的な現実が、急速に変貌しているのだ。

 いかなる経営者も、マネジメントの新たな概念やツール、新たな組織概念、情報革命といったものに高い意識を持っている。その意味からも、マネジメントに訪れつつある変化は重要であるだろう。

 ただしより重要なのは、前提条件の変化であり、マネジメントの理論や実践の根底にある仮定への影響である。マネジメントの概念やツールの変化が、経営者に行動改革を迫る。概念やツールが変われば、経営者の業務やその遂行方法が変わるからだ。

 現実が変化すれば、経営者の役割そのものに改革が求められる。その基本的な役割が変化するということは、経営者の存在理由も変化することを意味する。

 私の考えるところでは、次に挙げる5つの仮定が、過去半世紀のマネジメントの理論と実践の根底にある。これらの仮定は、マネジメントの範囲や仕事、その位置づけ、性質に関わるものである。

(1)企業だけが社会的責任を負う。