情報化がもたらすものは何か

 いまから20年後には、大会社では、経営陣の階層は半分以下に、経営管理者の数は3分の1以下になる。組織の構造や、経営陣に関わる問題や関心も変わり、今日の経営学の教科書が教える1950年頃のメーカーとは、似ても似つかぬものとなる。

 むしろ、病院、大学、オーケストラなどと同じように、会社も知識を中心とする組織になると共に、個別知識の専門家からなる組織、すなわち顧客や同僚との情報の交換を中心にみずからの仕事の方向づけと位置づけを行う専門家からなる組織になる。こうした組織を、私は情報化組織と呼んでいる。

 会社とりわけ大会社は、情報を中心とする組織にならざるをえない。その原因の一つは、人口の構造変化にある。今日すでに、被用者の重心は、肉体労働者やサービス労働者から、知識労働者へと急速に移行している。彼ら知識労働者は、100年前に会社が範とした軍の指揮命令にはなじまない。

 もう一つの原因が、経済の動きである。特に大会社が、イノベーションと起業家精神を不可欠のものとするようになるからである。さらにもう一つの原因が、情報技術の発展である。

 これに伴い、分析と判断、すなわち本当の情報に取り組まざるをえなくなる。さもなければ、膨大なデータに溺れるだけとなる。今日のところは、新しい情報技術も、データの大量処理という昔ながらの仕事をスピードアップするために使われているにすぎない。

 しかし単なるデータではなく、情報そのものに関心を移すようになると、意思決定のプロセス、経営陣の構造、仕事の処理の仕方が変わり始める。すでに今日、世界中の会社が大きく変わり始めている。

情報化組織の特徴

 情報技術が会社を変えるということはだれでもいえる。しかし、その結果、会社とそのトップ経営陣に求められるものが何になるかについては、まだ判然としないところがある。今日の時点では、会社以外の情報化組織、病院、オーケストラ、イギリスのかつてのインド支配体制などが参考になるだけである。