マネジメントの成功がもたらしたもの

 人類の歴史上、マネジメントほど急速に発展し、大きな影響を与えたものはない。それは、150年を経ずして、先進国の社会と経済を変えた。グローバル経済とその秩序を生んだ。その間、マネジメント自身も変化していった。

 マネジメントの基本的な役割は変わっていない。それは、共通の目標と価値観、適切な組織構造、教育訓練と自己開発の力によって、人々が共同して何事かを成し遂げるためのものである。

 しかし実は、このマネジメントの役割の意味さえ、今日では大きく変化している。しかもその主たる原因たるや、まさにマネジメントの成功が、労働力の中心を未熟練の肉体労働者から知識労働者に変えてしまったことにある。

 しかし今日、マネジメントのもたらした途方もない影響を十分に理解している者は、会社の世界にさえほとんどいない。その結果、今日直面することになった重大な問題に対処するための準備ができていない。いまや彼らが直面している最大の問題は、政治や技術がもたらした問題ではない。それは、企業やマネジメントの外の問題ではない。マネジメントの成功そのものがもたらした問題である。

 知識労働者数の増加

 第1次大戦勃発の頃、ようやく何人かの人たちが、マネジメントの出現に気づいた。その頃は、先進国では、8割の人間が3つの職種で働いていた。家事使用人、農民、そして製造業における肉体労働者である。

 これらのうち、今日では家事使用人はほとんど姿を消した。農民は、先進国では農業生産高が80年前の4、5倍に達したにもかかわらず、労働力人口の3%から5%を占めるにすぎなくなった。製造業の肉体労働者も、農民と同じ道をたどりつつある。