NPOの発展におけるマネジメントの役割

 すでにアメリカでは、ガールスカウト、赤十字、教会などの非営利組織(NPO)が、マネジメントのリーダー役になっている。NPOは、戦略や取締役会のあり方について、会社の世界では口先に終わっていることを実行している。知識労働者の動機づけや生産性という重要な問題についても、会社が取り入れるべき考え方や制度を生み出すことによって、パイオニアとなっている。

 あまり認識されていないが、今日アメリカで最も多くの働く人たちを擁する組織が、NPOである。成人の2人に1人、つまり8000万人強の人たちが、平均して週5時間ボランティアとして働いている。これは、フルタイムに換算して1000万人に相当する。彼らボランティアすべてが有給であるとするならば、最低賃金で計算しても、その総額は年間1500億ドルに達する。

 しかも彼らボランティアの仕事の中身が、急速に変わりつつある。もちろん技能や判断力をあまり必要としない仕事を行っている者もいるが、今日では、膨大な数の人たちが、まさに無給のスタッフとして、それぞれのNPOにおいて、マネジメントの仕事やスペシャリストの仕事を引き受けている。

NPOにとって不可欠なもの

 救世軍をはじめ、NPOの成功の底にあるものは、マネジメントへのコミットメントである。20年前、NPOの関係者にとって、マネジメントは金儲けを意味する汚い言葉だった。NPOは、商業主義の汚れとは無縁であり、収益など卑しい考えを超越していることを誇りにしていた。

 しかし今日、NPOのほとんどが、まさに自分たちには収益という基準がないからこそ、会社以上にマネジメントを必要とすることを認識している。

 もちろんNPOは、善をなすことに身を捧げる。しかし彼らは、よき意図が、組織、リーダーシップ、責任、仕事、成果に代わりうるものではないことを承知している。これらのためには、マネジメントが必要であることを認識している。そしてそのマネジメントが、組織の使命からスタートすることを知っている。

 会社がNPOから学ぶべきことの第1が、この使命からスタートすることである。そうして初めて、行動に焦点を合わせることができる。目標の達成に必要な戦略を明らかにし、規律をもたらすこともできる。そうすることによってのみ、特に大組織が陥る進行性の病、すなわち、限られた資源を生産的な活動に集中させることなく、おもしろそうなことや儲かりそうなことに分散させるのを防ぐことができる。