自社に関する4つの情報

 企業は、富を創出することに対して、代価の支払いを受ける。コストを管理することに対して、支払いを受けるわけではない。

 だが、この自明のことが、オーソドックスなコスト会計には反映されていない。会計学の1年生は、貸借対照表によって、企業の清算価値が示されると教えられる。最悪の事態において必要となる情報が、債権者に対し与えられると教えられるのだ。

 しかし企業は、清算されるために経営されているのではない。事業体として、すなわち、富を創出するために経営されている。

 そのためには、企業のエグゼクティブが、必要なことを知ったうえで意思決定を行うための情報が必要となる。すなわち、自社に関する次の4つの種類の情報──基礎的情報、生産性に関する情報、卓越性に関する情報、最も希少な資源(すなわち資金と人材に関する情報)──が、マネジメントの道具として必要となる。

 基礎的情報

 基礎的情報とは、昔から知られ、かつ広く使われている、経営状況の判断道具としての情報である。キャッシュフローや流動性、さらには、ディーラーの在庫台数と販売台数の比、収益と社債費の比、売掛金(半年超と総額)と売上高の比などである。

 これらのものは、医師による基礎的な検査、すなわち体重、脈拍、体温、血圧、尿の検査に該当する。数字が正常であっても、何ら特別なことは教えてくれない。しかし数字が異常ならば、発見し処置すべき問題が存在することを教えてくれる。これが基礎的情報である。

 生産性に関する情報

 事業の経営状況を知るための第2の種類の情報は、主たる資源の生産性に関するものである。その最古のものは、第2次大戦中に開発された肉体労働者の生産性の測定である。