人材派遣業の大きな成長

 さしたる注目を集めることなく、驚くべきことがビジネスの世界で起こっている。

 第1に、働き手のうち驚くほど多くの者が、現在働いている組織の正社員ではなくなっている。

 第2に、ますます多くの企業が雇用と人事の業務をアウトソーシング(外部委託)し、正社員のマネジメントをしなくなった。この2つの流れは、近い将来変わる気配はなく、むしろ加速していくものと思われる。

 組織と働き手との関係の希薄化は、あまりに重大な危険である。雇用関係にない人材の長期の受け入れや、雇用関係の雑務からの解放によるメリットの享受は、たしかに一つのやり方である。しかし、人の育成が最重要課題であることを忘れてよいはずがない。それは、知識経済下において競争に勝つための必須条件である。雇用と人事を手放すことによって、人を育てる能力まで失うならば、小さな利益に目が眩んだとしか言いようがない。

 人材派遣業の伸びの理由として挙げられるのは、雇用主としての機動力の強化である。しかしそれだけでは説明がつかない。今日では、あまりに多くの派遣社員が長期にわたって同一のクライアント企業で働いている。何年も派遣されている者もいる。もちろん機動力の強化というだけでは、雇用業務代行業の出現も説明できない。

 この2つの産業の伸びは、働き手を法的に非正社員にしているところにカギがある。両産業の急成長の原動力となっているのは、雇用主に課されている規制の増大である。

 今日、雇用関係の規制はコスト的に中小企業を絞め殺しかねないほどである。連邦政府の中小企業局によれば、労務管理上の規制、報告義務、税務申告に要する年間費用は、社員500人以下の中小企業では社員1人当たり5000ドルに達する(1995年の数字。その後の数字は発表なし)。