悪いニュースを伝えた後の全社会議に必要な6つのポイント
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サマリー:組織にとって困難かつ悪い知らせを従業員に伝える際、リーダーは感情と理性の両面に配慮しながら、共通ビジョンを示し、彼らに希望を持たせることが求められる。全社会議では、透明性を保ちつつ共感を示し、質問を受... もっと見るけつける姿勢が信頼を築くカギとなる。会議後も従業員との対話を続け、個別の不安に寄り添うことが重要だ。本稿では、従業員の士気を保ちつつ厳しい状況を乗り越えるためのリーダーシップの実践方法を紹介する。 閉じる

会社に関する悪い知らせをどう伝え、士気を保つか

 あなたの会社の従業員は、最近の社内における急激な変化に動揺している。不安定な経済情勢は、彼らの懸念に拍車をかけている。あなたはいまこそ、全員参加の会議を開き、それらの決定と今後の対応について説明しなければならない。カバーする領域は多岐にわたる。そのどれも容易ではなさそうだ。会議を生産的に進めるための最善の方法は、どのようなものだろうか。厳しい状況を正直に伝えつつ、それがその先の会話に決定的な影響を与えないようにするには、どうすればよいのか。また、今後数週間でチームの自信を高めるために、リーダーとして何ができるのか。

専門家の意見

 従業員は同僚を失ったり、新しいリポートライン(報告経路)に適応したり、より少ないリソースでより多くの業務をこなしたりしなければならない見通しの中で、さまざまなことを受け止めようとしている。全社会議でリーダーが言うこと(とその言い方)によって、彼らに安堵をもたらすか、さらなるプレッシャーを与えるかが決まると、ノースウェスタン大学教授兼コミュニケーション研究科長で、組織心理学者のレスリー・デチャーチは語る。

 人間は難しいニュースに接すると、感情レベルと理性レベルの両方で反応する。「リーダーはその両方に対処して、バランスを取る必要がある」と、デチャーチは言う。「予算削減や人員削減やイニシアティブの中止など、合理的なことだけに焦点を絞ると、冷たいとか、よそよそしいという印象を与える可能性がある。その一方で、『打ちのめされた』とか『我々は窮地に立っている』といった感情に入れ込みすぎた表現は、従業員を下降スパイラルに引きずり込むおそれがある」

「従業員の不安を認めて、彼らのありのままの状態に向かい合うことが大切だが、その不安にばかりとらわれてはいけない」と、コーネル大学S.C.ジョンソン・スクール・オブ・マネジメントの専任講師(経営コミュニケーション学)であるセオマリー・カラマニスは言う。「優れたリーダーは、現実を躊躇なく認める」。そのようなリーダーは、未来への希望と楽観を抱く余地も生み出すことができる。本稿では、このバランスを取る方法を紹介しよう。

共通のビジョンを定める

 厳しい発表をした後に全社会議を開く目的は、「組織の現状と、そこに至った経緯、そして今後の方向性について、共通意識を構築することだ」とデチャーチは語る。出席者はそれまでに見聞きしたことに基づき思い込みを抱いていることが多いが、建設的に前進するためには全員の認識を一致させる必要があると彼は言う。

 全社会議で語る内容を準備する時(そう、もちろん事前にメモを作成すること)は、「会議が終わった時、出席者の頭に残ってほしいメッセージ」と、それが組織の目標のどこに位置づけられるかについて「意図的になるべきだ」と、デチャーチは助言する。「こうした(全員の)精神的な一致は決定的に重要になる。それが日々の仕事をどのようにこなし、どのように決定を下し、どのように仕事を回し続けるかに影響を与えるからだ」(これについては以下に詳述する)

 リーダーのメッセージは、「いま、わかっていることはこれで、私たちが変更できることはこれで、今後みんなで向かう方向はこれだ」というシンプルなストーリーラインになっているべきだと、カラマニスは言う。

共感を持ってリードする

 リーダーは全社会議で、ストレートかつ安定した話し方をすべきだが、思いやりのある口調であるべきだと、カラマニスは言う。「重要なのは、共感と透明性を持って、真心を大切にリードすることだ」。動議を通すためだけに人を集めないこと。「従業員は、安心と本物のプレゼンスを求めている」と、カラマニスはつけ加える。「形ばかりの全社会議は、誰にでもわかる」。

 最近の決定の感情的な重みと、ビジネス上の現実の両方を明らかにするよう、デチャーチは勧める。「ダメージに言及しよう。きちんと口にして、従業員の思いを理解していることを示さなければいけない」。国の政策と経済情勢の変化が、あなたの会社の事業にどのような影響を与えるかを詳しく説明して、そのうえで、それが今後チームと仕事にどのような影響を与えるかに焦点を当てよう。「不透明な状況が続いていることを話そう」とデチャーチは言う。「従業員は、リストラを論理的に理解する前に、感情的に受け止めようとする。何が、なぜ起こったかをあなたがきちんと説明しなければ、彼らはついてきてくれない」

今後の道のりを明確にする

 困難を認めるからといって、ネガティブな感情に浸ることはないと、デチャーチは言う。厳しい部分を明確に説明したら、「未来に向けたポジティブなビジョン」を示して、「チームが不安を生産的なアクションへと転換するのを助けよう」。たとえば、次のような言葉をかければ、次のステップに進むよう従業員を穏やかに促せると助言する。「我々の目標は、力強く前進して、世界一の機器をつくり続けることだ。いまは、こうした外部要因のために、それを実行するのが難しくなっている。だが、レジリエンス(再起力)と適応力を持つ組織にはチャンスがある。そのような組織になろう」。リーダーであるあなたの目標は、現状について異なる位置づけ方をして、部下たちが進むべき道を見出すのを手伝うことだと、カラマニスは言う。「信頼と思いやりに根差した自信は、伝播するものだ」

質問を受けつける

 全社会議で話をするのは、リーダーだけであるべきではない。むしろそうすべきではないと、カラマニスは言う。あなたのチームは、ずっと抱いていた疑問がある可能性が高い。したがって、必ず「質問を受ける余地をつくる」こと。また、「会議がオンラインで行われ、大人数が参加する場合は、ファシリテーターが質問を集めたり、チャットグループのコメントを集めたりすると非常に役立つ」。

 そして、質問や意見によく耳を傾けること、とデチャーチは助言する。「リーダーとして共感が足りなかったと気づくかもしれない」と彼女は言う。「あるいは、オペレーション関連の質問や、従業員の職務に関連する質問が出てくるかもしれない。それは、リーダーが自分のアプローチを調整して、改善するチャンスだ」

 何より重要なのは、フィードバックを受けつけると、リーダーのアプローチがどのように受け止められているかを知れることだ。「チームの成功の最大の原動力になるのは、自分の仕事が組織とどのように結びついているかを理解することだ」と彼女は言う。現在のような新しい状況では、こうしたつながりが大きな違いをもたらす。

あらためてパーパスに目覚めさせる

 現実逃避的な楽観論に陥るべきではないが、従業員に明快性とパーパスを感じさせるような形で全社会議を終えるよう、デチャーチは勧める。「従業員がやる気をなくしたり、恐怖を抱いたりするような終わり方をしてはいけない」と、彼女は言う。「エンパワーメントを感じる必要がある」。そのために、組織のミッションや価値観と結びついた事例を語ることを、デチャーチは提案する。

 たとえば、ある従業員と廊下で交わした会話を紹介して、従業員の仕事が組織全体とどう結びついているかを示したり、チームの努力が現実的な問題解決につながったという顧客の反応を共有したりしてもよい。ただ、むやみに部下たちを応援したり、厳しい話に甘ったるいオブラートをかけたりするのはいけない。「従業員がなぜ仕事をしているのか思い出させるのに役立つような、ちょっとしたエピソード」を紹介するのがよい。

会場に留まる

 どんなに忙しくて、どんなにスケジュールが詰まっていても、全社会議の部屋に留まろう。「全社会議の直後には別の会議を入れないこと」と、デチャーチは言う。「言いたいことがあったけれど、会議中に発言するのは気後れしたという参加者がいるものだ」。だから、あなたのチームのために、会場に留まろう。

 そして会議の後、話題になったことや参照した資料を配付しよう。また、ニューノーマルの定期的なアップデートについて、今後予想されることを知らせるとよい。役割が変わった従業員のフォローをしよう。「現在のような状況では、かつては周辺的な仕事をしていた人が中心的存在になったり、中心的存在だった人が疎外感を覚えたりすることがある」とデチャーチは言う。たとえば、いまは財務チームが脚光を浴びるようになり、マーケティングや新規事業開発のポジションは存在感が乏しくなるかもしれない。「この変化を最も強く感じている人に声をかける」と彼女は言う。「彼らの話を聞き、その懸念に耳を傾けよう」。正直で、誠実で、インクルーシブ(包摂的)な態度を取ることだと、カラマニスは言う。「いまのような時期には難しいかもしれないが、それが正しいあり方だ」

覚えておくべき原則

やるべきこと

・最近の決定の感情的側面と合理的な側面の両方を明確にして、難しいことを認める。

・共通の精神を構築して、新しい状況がチームの共同作業にどのような影響を与えるかを、チームが理解できるようにする。

・明快性とパーパスが感じられ、チームを安心させるように会議を終える。

やってはいけないこと

・リーダーだけが話すこと。質疑応答の時間を設け、フィードバックに耳を傾けて、自分のメッセージがきちんと届いたかどうか判断しよう。

・ネガティブな感情に浸ること。ただし、現実逃避的な楽観論を示さないこと。現実と安心感のバランスを取ろう。

・会場をすぐに立ち去ること。全社会議の直後には別の会議の予定を入れないようにし、個別の会話に応じられるよう会場に留まろう。


"How to Lead an All-Hands After Delivering Bad News," HBR.org, May 26, 2025.