レジリエンスを高めるために
危機は変革のチャンスだ。コロナ禍は、企業が自社のビジネスモデルを再検討し、より広範なシステム全体のレジリエンスを高めるための、またとないチャンスをもたらした。そして、システム全体のレジリエンスを強化するのは、企業にとって不可欠なことでもある。
そのためにはまず、以下の6つの行動から始めるべきだ。
(1)逆境の中で強みを生み出す
単にリスクやダメージを和らげたり、元の状態を回復したりするだけでなく、新しい現実にうまく適応することにより、逆境の中で強みを生み出すことを目指す。
(2)未来に目を向ける
長い目で見ると、危機を通じて新しいニーズが生まれたり、ライバルが弱体化したりすることにより、自社にとってチャンスがもたらされる面もある。また、危機は長期的な変革を推し進める理由にもなる。したがって、リーダーは長期の視点を取り入れることがきわめて重要だ。
(3)協働の精神を持ってシステム全体を見る
状況が安定しているときは、一定の環境の下で、一定のビジネスモデルによって利益を最大化させることを目指せばよい。しかし、レジリエンスが問題になるのは、激しいストレスにさらされて、あるビジネスの構成要素間の関係や、ビジネスと環境との関係が変わるときだ。
そのような状況では、システム思考と、システム全体に関わる解決策が必要とされる。そして、それを実践するためには、社員と顧客とそのほかの利害関係者の間の協働が欠かせない。
(4)成果だけを評価対象にしない
ビジネスの健全性は、成果の数値評価だけで決まるものではない。そのような指標は、どうしても過去を評価するという性格を持ってしまう。
持続可能なビジネスを築きたいのなら、柔軟性や適応力など、レジリエンスに関わる要素も評価の対象にすべきだ。そうした要素の評価を行うには、自社がどのような恩恵を得ているか、もしくはどのような能力を持っているかのいずれかに着目すればよい。
(5)多様性を尊重する
レジリエンスを持つためには、状況への対応策をいくつも生み出せる必要がある。そして、そのために必要なのは、物事を新鮮な視点で見る能力だ。高度なレジリエンスを持っている企業は、多様なものの考え方を大切にし、多様性と変化の価値を認めている。
(6)変わることを前提とする
アリババの創設者ジャック・マーは、安定ではなく、変化を基本と考えている。レジリエンスとは、極端な状況に置かれた際に、ときおり調整を行うことではない。常に変化と実験を繰り返すことを前提にして組織づくりを行い、サポートシステムを整えなくてはならない。これを実践することにより、硬直化を避けられるし、段階的な修正を繰り返せば、1回で大規模な修正を試みるよりはるかにリスクが少ない。
主流のビジネス教育とマネジメント慣行では、業績のマネジメントに主眼が置かれてきた。そうした世界において、レジリエンスをはぐくむことは、リスクを軽減する効果があるだけでなく、ライバルに対して競争力を獲得する手立てにもなりうる。
15分間なら誰でも有名人になれる時代が来ると言ったのは、アーティストのアンディ・ウォーホルだ。今日のビジネスの世界でも、一時だけ立派な成果を挙げる企業は珍しくない。ほかとの違いを生み出すためには、レジリエンスをはぐくむことにより、目覚ましい成果を挙げ続ける必要がある。
HBR.org原文:A Guide to Building a More Resilient Business, July 02, 2020.
■こちらの記事もおすすめします
レジリエンスをはぐくむカギは「調達」にある
危機に直面するいまほど、想像力が大切なときはない
危機のいまこそ、エコシステムが競争優位につながる