アメリカ産業史に残る7人の巨人たち

 アメリカ産業界には歴史に名を残した数多くの巨人(タイタン)がいる。そのなかで本稿では産業のパラダイムを変えた人々、それによって世界を変えた人々を巨人と呼ぶことにする。以下の7人の巨人にスポットライトを当て、共通点を探ってみたい。

・アンドリュー・カーネギー(鉄鋼王)
・ジョージ・イーストマン(民生用カメラの父)
・ヘンリー・フォード(フォード・モーター創業者)
・トーマス J. ワトソン・シニア(IBMの生みの親)
・チャールズ・レブソン(レブロン創業者)
・サミュエル・ムーア・ウォルトン(ウォルマート・ストアーズ創業者)
・ロバート・ノイス(インテル共同創業者)

 巨人たちは各々ユニークだが、そのパーソナリティや生涯を丹念に追っていくと、隠された共通点を探り当てることができる。その一つに、特異な資質がある。

巨人たちの5つの法則

 巨人たちはみな、1000に1つの可能性を見抜いていた。そのほか、多くの経営者が模倣できそうな共通点もある。

 巨人たちの足跡を追ったところ、以下に挙げる5つの法則が浮かび上がってきた。

(1)ビジョンを実現するために勇気を持って市場に挑む。

 ジョージ・イーストマンによって、「写真」は我々の身近なものになった。彼の尽力によって、プロの写真家や肖像画家に頼らなくても、折々の思い出をかたちとして残せるようになった。

 彼の生いたちは、およそ写真とは無縁である。保険会社を経て銀行の事務員として働いていた1877年、彼は1台のカメラを購入し、その4年後銀行での職を辞して写真事業に賭けた。やがてイーストマンの事業によって、プロの写真家だけの複雑な機械は、だれもが手にできる「小さな箱」へと変貌する。

 写真事業の世界に飛び込んだ当初は、イーストマンといえども、カメラ市場の誕生を予見していなかった。当時、カメラは50ドル前後もする奢侈(しゃし)品だったうえ、専門家でなければ操作できなかった。1880年代の初めまでは、自分で写真を撮ることなど想像すらできなかった。