成功した新任者
失敗した新任者

 その子会社は窮地に陥っていた。本社経営陣は立て直しのために、まだ若いが、申し分のない経歴の持ち主を、マーケティング担当バイス・プレジデントとして他業界から迎え入れ、自由裁量を与えた。

 彼は、ブランド・マネジメントの考え方に従ってマーケティング部門を再編すると共に、営業部門をてこ入れし、新しいマーケティング戦略を立案した。しかしそのかいもなく、営業利益率はさらに低下し、9カ月後、彼は職を失った。

 別の企業でも、親会社が大幅な赤字に苦しむ子会社を再建すべく、同じく他業界からマネジャーを招聘し、大きな裁量を与えた。この人物もまた、ブランド別に新しいマーケティング戦略を考えた。すると、1年もしないうちに、この子会社の営業利益率は改善し、3年のうちに黒字転換を果たして、売上げは倍増した。

 一見する限り、これら2つの事例はとても似ている。どちらの新任マネジャーも30代の半ばで、業界経験はない。そして、同じようなアプローチで大規模な改革に着手した。また、どちらの経営陣も難物であった。しかし、一方は成功し、他方は失敗した。いったい何が違っていたのだろう。

「テイク・チャージ(新たな任務に当たる)・プロセス」を一定期間観察したところ、2つのパターンがくっきりと浮かび上がってきた。

 一つは、このプロセスが長期にわたる点である。我々が調査した事例では、アメリカ人マネジャーの場合、2年から2年半、ヨーロッパ人やイギリス人のマネジャーの場合はさらに長い時間を要していた。

 2つ目の特徴は、新任マネジャーがこのプロセスのなかで、学習や行動を着実に積み重ねていくわけではないという点である。むしろ、一時的だが集中的な学習と行動が断続的に繰り返され、その内容も時間の経過と共に変化していく。

新任マネジャーたちの行動パターン

 すべての成功例に同じパターンが表れるのはなぜか。また、改革が大規模な場合、必ずと言ってよいほど、3回の波が起こるが、それはなぜか。