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経営者の持つべき倫理観
ハーバード大学教育学大学院教授のハワード・ガードナーは、心理学者の一人として、道徳的あるいは倫理的な能力がどのように発達するのかを明らかにすることが自分の使命であるという信念があった。
道徳心にまつわるガードナーの見識の中核となっている部分は、プロフェッショナルを10年以上にわたって研究してきた経験に基づいている。
ガードナーは1995年から、4つの大学の研究者たちとチームをつくり、プロフェッショナルたちがどのように「まっとうな仕事(グッド・ジョブ)」を目指しているかを研究してきた。まっとうな仕事とは、質が高く、社会に資するものであり、また他者の生活を向上させ、しかも倫理を踏まえたものだと言う。
経営者が自分自身と企業組織において、高い倫理基準を掲げ、それを維持するために何をすべきなのか、HBR誌のシニア・エディター、ブロンウィン・フライヤーが聞いた。
道徳心を4つの知性に分ける
HBR(以下色文字):道徳心とは何なのでしょうか。
ガードナー(以下略):知性を複数の認知能力の集合体であると考える時、道徳心を他の4つの知性と区別するとよいでしょう。これら4つの知性は、いずれも我々が、個人として、コミュニティとして、そして人類として繁栄するために特に涵養すべきものです。
まず1つ目は「鍛錬する知性」(disciplined mind)で、どのように勉強するのか、学校でその方法を教えれば身につくものです。時間をかけてしかるべき訓練を積めば、プロジェクト・マネジメント、会計、音楽、歯科医療など、1つないし複数の分野で専門技能を習得することができます。
2つ目は「総合する知性」(synthesizing mind)で、さまざまな情報源を調べ、重要かつ注目すべき情報を取捨選択し、それらを総合し、体系的なまとまりとして自分や他者が利用できるようにするものです[注1]。