優れたマネジャーには権力動機が不可欠

 たいていのビジネスマンや研究者は、成功した中小企業の経営者が何に動機づけられているのか、よくわかっている。その成功のカギは、心理学者が「達成動機」と呼んでいるもの、すなわち、いままで以上に優れて、かつ効率的に物事を達成したいという願望である。

 では、この達成動機は優れたマネジメントにどのような影響を及ぼすのだろうか。努めて効率的でありたいと強く求める人は、なぜ優秀なマネジャーへと成長するのか、実のところ、その根拠を理論的に説明できない。

 とりわけ大規模で複雑な組織のマネジャーの場合、成功に必要な一切合財の仕事を自分の手でやり切れるわけではない。部下たちを動かし、組織のために働かせなければならない。

 しかも、それぞれの仕事が大勢の人間に分散しているため、マネジャーは各人にタイミングよくフィードバックするといったことなど考えず、てきぱき物事を進めていく意志がなければならない。

 マネジャーの仕事は、一人で優れた成績を上げる者よりも、うまく人を動かせる者に向いているようだ。したがって、モチベーションという点からすれば、達成動機よりも権力動機の強い人がマネジャーとして成功すると期待できる。

 我々はマネジャーを動機づける要因を知るために、アメリカのさまざまな大企業のマネジャーを調査したが、その結果から得た結論は、長を務めるマネジャーは高い権力動機を抱いていなければならないということだった。つまり、人を動かすことに興味を持っている必要があるのだ。

 しかしこの権力動機は、マネジャーの権力を拡大するためではなく、組織全体の利益となるよう、みずからを律し、コントロールしなければならない。そして長を務めるマネジャーならば、人に好かれたいという欲求よりも権力への欲求が強くなければならない。

ある営業担当マネジャーに突きつけられた事実

 優秀なマネジャーは達成動機よりも権力動機が強いとは、何を意味しているのだろうか。