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組織の創造性を高めるリーダーシップ
創造性は、常にビジネスの要であるにもかかわらず、これまで最優先課題として扱われることはなかった。役に立つ新しい何かを生み出す能力、すなわち創造性は、新しい事業を興し、グローバル企業に成長した後も一流企業であり続けるという意味において、まさしく起業家精神の本質といえる。
我々は、創造性に関する理論と実践を結びつける目的で、ハーバード・ビジネススクールで2日間のセミナーを開催した。産学100人が一堂に会し、白熱した議論を繰り広げた。
真っ先に聞こえてきたのが、創造性はいっさい管理すべきではないという、マネジメントの役割への懐疑的な意見であった。インテュイットの共同創設者スコット・クックは、「組織に創造性のボトルネックがあるとしたら、それはきまって上部にあります」と述べている。
ところが、セミナーの終盤、参加者の間で、創造的なプロセスにも、リーダーが果たすべき役割があり、それは一般にいわれてきた従来の仕事とは異なるものであるという意見が多数を占めるようになった。
そして最終的に、本セミナーでの議論を通じて、リーダーは「創造性を管理するのではなく、創造性のために管理する」という見解に至った(囲み「創造性のマネジメントの心得」を参照)。
創造性のマネジメントの心得
創造性を強化したければ──
自分だけがアイデアの源泉ではないことを肝に銘じる
・目利きになる。
・ひらめきを与えるような質問を投げかける。
・現場からさまざまなアイデアが湧き上がってくるようにする。
多様性を促す
・経歴や専門分野の異なる人々を協働させる。
・創造性の肥やしとなるような経験を積むことを各人に奨励する。
・創造的な第三者にも開かれた組織をつくる。
失敗の必然性と有用性を認める
・失敗から最大限のことを学べるように、心理的に安心できる環境を整える。
・失敗にはさまざまなタイプがあり、どうすればそれを活用できるのかを理解する。
・アイデアを取捨選択し、発展性のないプロジェクトを減らす仕組みを開発する。
コラボレーションを実現する
・「発明者は孤独なもの」という神話を打破する。
・他者の成功を支援する「スーパースター」を特定する。
・隠喩、類推、物語を利用した「コーディネーション・トーテム」によって、チーム全体として概念化できるように支援する。
創造性の各段階を具体化し、さまざまなニーズに貢献する
・漠然としている初期段階には管理を持ち込まない。
・調査に十分な時間と資源をかける。
・商品化に向けたプロセスを管理する。
知的好奇心を刺激することでモチベーションを高める
・商品化のプレッシャーから開発者たちを守る。
・創造的なアイデアの障害となる官僚主義を排除する。
・「まっとうな仕事」をやってもらう。
・事あるごとに、より高いプロジェクト目標を示す。
・可能な限り、自主性を尊重する。
「まっとうな仕事」に従事できる環境が肝心
ハーバード大学教育学大学院教授のハワード・ガードナーは「その仕事が素晴らしいと思える時、一生懸命になれる可能性が最も高くなります」と指摘する。
彼は、クレアモント大学院大学特別教授のミハイ・チクセントミハイ、スタンフォード大学教授のウィリアム・デーモンと共同で、「まっとうな仕事(グッド・ワーク)」に関する研究を進めている。